直線では静かなのに、右カーブや右への車線変更になると足元から低いうなり が立ちのぼる。この音が偶然であることはめったにありません。たいていは ハブベアリングで、しかも操作の向きが、どこを見ればいいかをそのまま指し 示してくれます。ここでは診断の理屈、リフトなしでできる手順、よく似た音、 そして修理がどう決まるかを見ていきます。
うなる側は、反対のホイールを指している
ハブベアリングはホイールが回るための軸受で、走っているあいだずっと車重 を支えています。右カーブでは遠心力で車体が左に傾き、質量の大半が左側の ホイールに移ります。左フロントのベアリングの軌道面がすでに荒れていれば、 増えた荷重でうなりが大きくなり、荷重の抜けた右側は静かなままです。つま り「右で鳴る」なら左のベアリング、「左で鳴る」なら右のベアリング、とい うことになります。
大事な但し書きが一つ。この法則が成り立つのは時速40〜60キロ以上のゆるや かなカーブです。駐車場や車庫まわりのような低速の小回りでは、ドライブ シャフトからパワステまで別の機構と別の容疑者が混ざってきます。
一度の外出でできる手順
必要なのは、すいた平坦な道と10分です。
- 時速60〜80キロまで加速し、基準を取ります。直線でうなりは出ているか。
- 軽く右へ、次に左へ振ります。どちらのカーブで大きくなり、どちらで 小さくなるかを覚えます。
- うなりの出る速度でニュートラルに入れ、惰性走行します。音が残るなら、 エンジンとミッションは容疑から外れます。
- 同じ内容を別の路面で繰り返します。音が変わらなければタイヤではありま せん。
- 走ったあと、気をつけながらホイールに手を近づけます。片側のハブだけ 明らかに温かければ、それも証拠のひとつです。
結果は二行でメモしておきます。「60キロから、うなり、右で強まる、惰性で も残る、路面で変わらず」。整備士にとってはこの一文があるだけで、リフト 上の診断は10分で片づきます。あとはホイールを持ち上げ、回して、二方向に 揺すってガタを見るだけです。
よく似た音
| 気づいたこと | 考えられる音源 |
|---|---|
| 停車したままハンドルを切るとうなる | パワステポンプ |
| 路面によって音が変わる | タイヤ |
| 駆動をかけた小回りでゴリゴリ、カチカチ | アウター側のドライブシャフト |
| カーブではなくアクセルに連動する | デフ、ミッション |
| 直線でも一定に鳴り、操作に反応しない | 進行したベアリング、またはタイヤ |
いちばん多いそっくりさんはパワステです。ポンプはハンドルを切ると唸りま すが、ベアリングと違って停車中でも唸り、走行速度は影響しません。操作と のつながりがはっきりしない一定のうなりは、それ自体が別の問題で、原因の 一覧は症状ページ 走行中のうなり音にまとめてあります。 摩耗したハブの音の特徴は ハブベアリングのうなりをご覧ください。
修理はこう決まる
請求を正直に保つポイントが二つあります。第一に、反対側にガタも異音もな いのに「ついでに左右セットで」に頷かないこと。ベアリングは片側ずつ替え る部品です。第二に、作業に入る前に自分の車の造りを確かめること。ベアリ ング単体は部品としては安いがプレスが要り、ハブアッセンブリーは部品代が 高い代わりに作業が早く、圧入で失敗する余地がありません。
修理の寿命を決めるもう一点が、ハブナットの締付トルクです。締めすぎでも 緩すぎでも新品のベアリングは数千キロで壊れるので、インパクトではなく トルクレンチを使っているかは見ておきたいところです。それと、今どきの車 ではABSセンサーがハブアッセンブリーの中にあることが多く、ベアリングが 弱ると異音と一緒に警告灯まで出てくるのはそのためです。
自分の耳が正しい方向を指しているか自信がないときは、車線変更をしながら Stukアプリでうなりを録音してみてください。アプリは録音と回答を突き合わ せ、考えられる原因を確率と緊急度つきで示します。「何か鳴っています」で はなく、仮説を持って工場に行けるようになります。