ショックアブソーバーはスプリングの動きを抑える部品です。これがないと、 足まわりは段差のたびに跳ね続けるトランポリンになります。やっかいなのは、 その死に方が少しずつ、目に見えない形で進むこと。運転者は変わっていく 挙動に週ごとに慣れてしまい、どこかの時点で、正常ではないものを正常と して受け入れます。このまま乗り続けると、車に、そして出費に何が起きる のかを見ていきましょう。

路上で失われるもの

いちばん大きな結果は、タイヤと路面の接触が失われることです。跳ねて いるタイヤは、時間の一部を宙か、荷重の抜けた状態で過ごし、その瞬間は 制動力も横方向の力も伝えていません。実際にはこう現れます。

  • 制動距離が伸びる。とくに荒れた路面で。
  • コーナーで車体が浮つき、ハンドルへの反応が遅れる。
  • 高速道路でふらつき、細かい修正舵が絶えず要る。
  • タイヤが跳ねるので、ABSの介入が早く、そして荒くなる。
  • うねった舗装で車体が独自のリズムで揺れ始める。

ハイドロプレーニングにも触れておく価値があります。跳ねているタイヤは 水をうまく押しのけられず、車が浮き始める速度の敷居が早く来ます。

たちが悪いのは、その劣化がなめらかに進むことです。ショックは何年も かけて効きを失い、運転者は新しい挙動に順応していきます。早めに ブレーキを踏み、コーナーへそっと入り、高速ではハンドルを強めに握る。 そして安全の余裕がもう使い切られていることに気づかない。差がはっきり 分かるのはたいてい修理のあと、車が浮つかなくなってからです。

次に壊れるもの

部品何が起きるか
スプリング想定外の条件で働き、折れやすくなる
アームのブッシュ絶え間ない衝撃荷重で壊れる
スタビリンクとブッシュ年単位ではなく月単位で終わる
ストラットのアッパーマウント衝撃を受け止め、ゴリゴリ鳴り始める
ハブベアリング荷重の変動で摩耗が加速する
タイヤ部分的な偏摩耗、のこぎり状の段付き

最後の行が、出費としていちばん実感しやすいところです。ひと季節で まだらに削れたタイヤ一式は、ショック一組の交換に匹敵する出費に なります。

本当に抜けているのか確かめる

フェンダーに体重をかけて放すお馴染みのバウンステストは、思われている ほど当てになりません。いまどきのショックは、効きを半分失っていても このテストを通ってしまいます。やり方と限界は バウンステストでショックアブソーバーを確かめるに まとめました。もっと確かなのは、しるしの組み合わせを見ることです。 本体のオイルのにじみ、段差での打音、段差を越えたあと一往復以上続く 車体の揺れ、偏ったトレッドの減り、高速道路での挙動の変化。

テスターにかける計測は客観的な絵をくれますが、どこにでもある設備では ありません。折衷案はリフトに上げての点検で、そのついでに周辺部品も 一緒に見てもらえます。ショックが一人で死んでいたためしは、まずない からです。この話が始まるきっかけになる音の一群は、症状ページ 段差での打音にあります。猶予の 見積もりは 打音のする足まわりのまま走れるかを どうぞ。

修理はどう決めるか

ショックは軸単位で交換します。左右で減衰が違うとブレーキで片流れが 出て、修理の意味が半分失われます。

見積もりに入れておきたい、そして確認する価値のあるものが二つ。 ストラットのアッパーマウントとバンプラバーです。ストラットを分解し ないと手が届かず、ショックと一緒に傷んでいます。あとから替えるなら、 同じ分解をもう一度払うことになります。もうひとつがアライメントです。 これは選択肢ではなく必須の工程で、ストラットを替えれば足まわりの 角度が変わるからです。

もうひとつ、乗り味を決める問いがあります。交換する部品が純正の仕様に 合っているかどうかです。片方の軸に硬い社外品、もう片方に純正、という 組み合わせは、前後で性格の違う車を作ります。それは、へたった一式で 走っていたときよりも付き合いにくいものです。

足まわりが鳴っているのか、それとも自分の車ではこれが普通なのか自信が ないときは、いつもの荒れた区間でStukアプリに音を録ってみてください。 アプリは録音とあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因を確率つきで 示します。いま診断を受けるか、次の点検まで待つかを決めるには、たいてい それで足ります。