速度域で出る低いうなりは、工場でいちばん多い相談の一つであり、いちばん 人をだます症状の一つでもあります。ホイールが回るための軸受であるハブ ベアリングの摩耗と、うるさいタイヤ。この二つは音があまりに似ていて、 経験のある整備士でも取り違えます。しかも間違いの代償は両方向にあります。 健全なベアリングを替えてうなりが残ることもあれば、何か月もタイヤのせいに しているうちにベアリングにガタが出ることもある。この二つの音がどう違い、 一回のドライブでどう切り分けるかを説明します。
なぜ取り違えるのか
主要な特徴が両方で同じだからです。車速とともに大きくなり、エンジン回転を 無視する低周波のうなり。ニュートラルでの惰行はどちらも消しません。どちら の場合も音源はホイールと一緒に回っているからです。だから定番の「クラッチ を踏んで聞く」小技は、ここでは役に立ちません。除外できるのはエンジンと ミッションであって、二人の主要容疑者ではありません。
切り分けは間接的なサインで行います。路面への反応、カーブでのふるまい、 音が出てきた経緯、そしてトレッドの摩耗の形。どれか一つで判決は出せません が、三つか四つ一致すれば、たいてい自信を持って答えられます。
並べて比べる
| サイン | ハブベアリング | タイヤ |
|---|---|---|
| 路面への反応 | どの舗装でもほぼ同じ | 新しくなめらかな舗装で明らかに静か |
| 時速60〜80キロのゆるいカーブ | 片側で大きく、逆側で小さい | ほとんど変わらない |
| 音の質 | 均一なうなり、のちにゴロゴロと唸り | ざらついた転がり音、摩耗するとうねりを伴ううなり |
| 出はじめ方 | 少しずつ、数週間かけて育つ | ホイール交換の直後か、トレッドの摩耗とともに |
| 季節性 | 季節に関係ない | 冬用や悪路用は設計上うるさい |
| 振動 | 末期にハンドルと床へ | 不均一な摩耗があると特定の速度でビリつく |
| 前後のホイール入れ替え | うなりはその場に残る | うなりがホイールと一緒に移る |
一回のドライブでできる三つのテスト
- 路面テスト。 同じ道で舗装の質を変えて走ります。新しくなめらかな 区間と、粗くて古い区間。ほとんど変わらなければベアリング寄り、 なめらかな区間で明らかに小さくなればタイヤ寄りです。ただし落とし穴が あります。のこぎり状の摩耗がひどいタイヤはどんな路面でもうなるので、 このテスト単独では決まりません。
- 旋回テスト。 空いた道を時速60〜80キロで走り、ゆるやかに左、続いて 右へ寄せます。荷重は外側のホイールへ移ります。左へ寄せてうなりが育つ なら右側に荷重がかかっているので、右のベアリングが容疑者。逆も同じ です。タイヤの音はゆるやかな車線変更ではほとんど変わりません。
- 入れ替えテスト。 自宅でできるテストの中でいちばん正直です。前後の ホイールを入れ替えます。うなりが車軸をまたいで移動したらタイヤが犯人、 その場に残るならタイヤは無実です。
もう一つの手がかりは経緯です。タイヤ交換の当日に出たうなりは、ほぼ必ず ホイールの話。一式が違う、パターンが違う、装着のミス。一か月前はかろうじて 聞こえる程度だったのに、いまは同乗者にもはっきり分かるというのは、 ベアリングの典型的な軌跡です。
タイヤがうなっている場合の典型例
- のこぎり状の摩耗。 トレッドのブロックが段差状に減ります。後輪と、 長くローテーションしていないタイヤに多い。低く均一なうなりを出し、 ベアリングに最も似ています。
- アライメントや空気圧による不均一な摩耗。 内側か外側の肩が食われる、 バランスが崩れてまだらに減る。うなりに軽い振動が加わります。
- トレッドの設計。 冬用、スタッド付き、悪路用のオールテレーンや マッド系は、不具合ではなく構造としてうるさい。
- 硬くなった、くたびれたゴム。 コンパウンドは年齢とともに硬くなり、 五シーズン目には、かつて静かだったタイヤがはっきりした声を持ちます。
確認は一分です。回転軸に沿って、両方向に手のひらをトレッドの上で滑らせ ます。おろし金のように段差を感じたら、音源を見つけた可能性が高い。
別のケースとして、回転方向指定のタイヤを矢印と逆に組んでいる、あるいは 非対称タイヤをInside面が外になるように組んでいる場合があります。この一式は 装着直後からうなることがあります。サイドウォールのRotationの矢印と Outside/Insideの表記は、工具なしで一分あれば確認できます。
ベアリングの場合
ベアリングに票を入れる材料は、ゆるいカーブで音が変わること、どの路面でも 同じ音であること、数週間かけて少しずつ育ったこと、そしてうなりがゴロゴロ 音に変わっていくことです。後半の段階では振動とガタが加わります。ホイール を浮かせて垂直に揺すると打音を感じ、手で回すとざらついた抵抗があります。 多くの車では、壊れたハブはABSの故障コードも出します。センサーがハブに 組み込まれているからです。手順は ジャッキアップしてハブベアリングのガタを見る に、走ってよいかの判断は ハブベアリングがうなったまま走れるか にあります。
修理は何をするか
工場での確認は単純です。ホイールを浮かせて揺すり、回しながら整備士がハブ の音を聞く。数分で終わりますし、修理を頼む前提なら無料でやってくれること も多い。
作業の形を決めるのは二つです。一つは、その車が既存のハブに圧入する ベアリングなのか、ユニットごと交換するハブアッセンブリーなのか。これで 金額も時間も決まります。もう一つはハブナットの締付トルク。締めすぎでも 緩すぎでも新品ベアリングは数千キロで壊れるので、インパクトレンチではなく トルクレンチを使ってもらってください。
タイヤが原因と分かった場合、対処はたいてい安く済みますが、不均一な摩耗 そのものには目を向ける価値があります。ふつうはアライメントのずれか、 くたびれたショックが原因で、直していない車に新しい一式を履かせても同じ ように減ります。
うなりの原因の全体像は、ベアリングとタイヤだけでなく駆動系まで含めて、 症状ページ 走行中のうなり音 と ハブベアリングのうなり にまとめてあります。
工場へ行く前にもう一つの意見が欲しいなら、走りながらStukアプリでうなりを 録音してください。録音を解析し、路面、カーブ、音の出はじめ方についていく つか確認の質問をしたうえで、考えられる原因を確率つきで示します。