ブレーキキャリパーは、ペダルを踏めばパッドをローターへ押し付け、離せば 解放するはずの部品です。「固着した」とは、その動きを失ったということ。 ピストンかブラケットのスライドピンが、腐食と汚れにつかまれた状態です。 やっかいなのは、これが数か月かけて進み、長いあいだ明確な故障として現れ ないことです。ブレーキは「まあ効いている」のですから。以下、リフトなし で固着を見分ける兆候と、オーバーホールの中身を見ていきます。
キャリパーが固着する理由
キャリパーは車で最も過酷な場所にいます。水、砂、凍結防止剤、そして数百 度までの発熱。それらから守っているのは、ピストンとスライドピンのゴム ブーツだけです。流れは単純で、ブーツが裂け、水が入り、腐食が起き、部品 が滑らなくなります。
整備の間隔が空くとそれが早まります(スライドピンはパッド交換のたびに 清掃してグリスを塗るべきです)。水分を吸った古いブレーキフルードもシリ ンダーの内側から錆を呼びますし、長期の放置も同じです。屋外で一か月置い た車のキャリパーは、とくに固着しやすくなります。
季節も関係します。この問題が見つかる典型的な時期は、凍結防止剤の冬を 越えた春です。寒い数か月のあいだ腐食は目に見えないところで仕事をし、 暖かくなって活発に走りはじめた最初の日に、熱いホイールと片流れとして 姿を現します。ですから季節のタイヤ交換に合わせた春のブレーキ点検は、 形式ではなく、問題を初期でつかまえる最も安い方法です。
主な兆候
| 兆候 | 起きていること | 固着している場所 |
|---|---|---|
| 制動時に片側へ取られる | 片方のキャリパーが十分に締め付けていない | ピストンかスライドピン |
| 踏んでいないのに片側へ寄る | パッドが押し付けられたまま | ピストンが戻っていない |
| 一輪だけ熱い | パッドがローターを擦っている | ピストンかスライドピン |
| ホイールから焦げたにおい | パッドの過熱 | ピストン |
| パッドがくさび形か片側だけ減る | ブラケットが斜めになっている | スライドピン |
| 転がりが悪い、燃費悪化 | 常に軽く制動している | ピストン |
どれか一つで断定はできませんが、二つ三つ重なればほぼ確定的な絵になり ます。引きずるパッドは、ペダルを踏まなくても聞こえる ブレーキの鳴きや擦れ音を出し、それが 温度で変わります。制動時の金属音はパッド残量を確認する理由です。固着し たキャリパーはパッドを偏って、しかも速く食べます。 ブレーキ時のゴリゴリ音と ブレーキパッドの摩耗を音で判断する も併せてどうぞ。
自分でできる確認
- 温度テスト。 強い制動を避けて15〜20分穏やかに走ったあと、各ホイー ルの近くに手をかざします(ブレーキローターには触れないこと。やけどし ます)。四輪が同じくらいの暖かさのはずで、一輪だけ明らかに熱ければ そのキャリパーが容疑者です。
- 惰行テスト。 空いた平坦な道で40〜50km/hまで加速し、ニュートラル で惰行します。以前より明らかに早く減速する、あるいは片側へ寄るなら、 どこかが引きずっています。
- パッドの目視。 季節のタイヤ交換のときにパッドを比べます。健全な キャリパーなら内側と外側はほぼ同じ速さで減ります。くさび形の減り方や、 1.5〜2倍の差があればスライドピンの固着です。
- 雨の後に聞く。 湿った夜のあとローターに薄い錆が乗るのは正常で、 数回の制動で消えます。しかし一輪から出る鳴きが走行中ずっと続くなら、 それはもう湿気の話ではありません。
放置するとどうなるか
押し付けられたままのパッドはローターを過熱させ、過熱したローターは歪み ます。すると制動時にジャダーが出て、ハンドルとペダルに伝わります。詳し くは 制動時のジャダーを。パッドは 数万kmではなく数千kmで無くなります。
最も危険な筋書きは、長い山の下りです。常に熱を持っているブレーキはフル ードを沸騰させ、回路に気泡ができてペダルが沈みます。起伏のある道では 理論上の危険ではないので、引きずるキャリパーは長距離のあとではなく前に 直すべき故障の一つです。
前と後ろ、どちらが固着しやすいか
工場の経験では、リアのキャリパーのほうが多く傷みます。理由は二つ。第一 に、リアブレーキはフロントより仕事量が少なく、制動力の分担が小さいので 自分を磨く機会が少なく、暖まるのも遅く、湿気が長く居座ります。第二に、 多くの車ではリアキャリパーにパーキングブレーキの機構が組み込まれていま す。独自のメカを持つ追加のユニットで、サイドブレーキを使わない習慣は それを痛めるだけです。何年もサイドブレーキに触らないAT車のオーナーは、 この筋書きをご存じでしょう。凍える日に一度引いたら、ホイールを放してく れなくなるのです。
実践的な結論は、サイドブレーキを特別な日だけでなく日常的に使うこと、 そして気になっているのが前輪だけでも、パッド交換のたびにリアキャリパー の点検を頼むことです。
修理はどう決めるか
再生は交換より何倍も安く済むので、まともな工場は既定で新品を勧める前に ピストンとシリンダーの状態を評価します。シリンダーの内面はどうだったか 尋ねてください。点錆があれば交換、面が健全ならリペアキットです。
もう二つ。ピンとピストンシールに、ゴムを侵さない耐熱ブレーキグリスを 使っているか。一般のシャシーグリスはブーツを壊し、一シーズンで症状が 戻ります。そしてブレーキフルードの交換時期が来ていないか。水分を吸った フルードこそがシリンダーを内側から腐食させるので、古い液を残したままの オーバーホールは半分の仕事です。
安上がりな予防は、パッド交換のたびにスライドピンへグリスを塗ってもらう ことです。作業はほとんど増えず、固着を何年も先送りできます。
ブレーキの音が耳慣れないものになり、原因がはっきりしないなら、走行中に Stukアプリで録音してください。アプリは録音と、音が出る場面についての 回答を照合し、考えられる原因と緊急度を示します。