ターボ付き1.4 TSIを積んだシュコダ・ラピッドとオクタビアはよく見かける 車で、オーナーからの相談もほとんど同じ言い回しです。「始動して最初の 数秒だけ鳴って、あとは何ともない」。この説明に当てはまる部品はいくつも あり、しかも費用が桁違いに違います。安いアイドラーからタイミング駆動系 まで幅があるのです。エンジンを開けずに、音の性格で見分ける方法を 説明します。
なぜ冷間始動が勝負どころなのか
エンジンを止めるとオイルはオイルパンに落ち、油圧はゼロになります。 始動の瞬間、チェーンテンショナー、ラッシュアジャスター、補機ベルトの テンショナーといった油圧で支えられている部品はすべて、一、二秒のあいだ まともな支持なしで動きます。同時に冷えた金属のクリアランスは最大で、 オイルも硬くて回りにくい状態です。
つまり毎朝、自動的にストレステストが行われているようなものです。摩耗が まだ許容範囲内の部品は、暖まったエンジンでは静かでも、冷間始動では 正体を現します。だから冷間時の打音はほかのどの症状よりも先に出ることが 多く、たとえ二秒で消えるとしても注目する価値があります。
典型的な三つの発生源
| 音 | 継続時間 | 多くの場合の正体 |
|---|---|---|
| ガラガラという金属的な音 | 始動後1〜2秒 | タイミングチェーンとテンショナー |
| 乾いた速いカチカチ音 | 10〜60秒、暖機とともに減衰 | ラッシュアジャスター、油圧不足 |
| キーッという音がやがて唸りに変わる | 冷間時、負荷がかかったとき | ファンベルト、アイドラー、オルタネーター |
| 発進時の鈍い打音 | 暖機とは無関係 | エンジンマウント |
| 床下からのビビリ音 | アイドリング時、ボディに響く | 遮熱板、排気系のマウント |
いちばん分かりやすいのがチェーンのガラガラ音です。短くけたたましく、 油圧が立ち上がった瞬間にぴたりと止まります。摩耗の進行段階ごとの全体像は タイミングチェーン伸びのサイン にまとめてあります。テンショナー本体がへたっている場合も音の出方は 似ていますが、こちらは油圧が上がっても収まりきらないのが特徴です。 一方ラッシュアジャスターのカチカチ音はもっと長く続き、じわじわと 薄れていきます。 冷間時のラッシュアジャスターのカチカチ音 を参照してください。音がキーッという鳴きに近く、エアコンを入れたり ハンドルを切ったりすると変化するなら、見るべきは補機類です。 ベルトが鳴いたまま走れるか が参考になります。冷間時の音の一覧は症状ページ 冷間時のエンジン打音 にあります。
まず何を確認するか
点検は安いところから高いところへ進めるのが筋です。最初はオイルです。 量、使用期間、粘度が指定どおりか。劣化したオイルや硬くなったオイルだけで カチカチ音もチェーンのガラガラ音の長さも説明がつくことがあり、この段階で 交換だけで終わる場合もあります。
次に補機類です。ベルトとアイドラーは数分で確認でき、その音はエンジン 内部の音と取り違えられがちです。ベルトを一時的に外して始動してみれば、 原因がまだ中にあるのかどうかがはっきりします。
エンジンマウントの音も聞いておく価値があります。マウントの傷みは発進時や 変速時に鈍い打音を出し、暖機とは無関係ですが、冷間始動時の全体的な 騒音に紛れて見落とされやすいのです。 エンジンマウントが傷んだときのサイン を参照してください。
三つめはカム角センサーとクランク角センサーの故障コードです。相関異常が 出ていれば、分解せずにチェーンの伸びを直接示唆します。そこまで確認して 初めて、カバーを外してテンショナーの突き出し量やガイドの状態を見る意味が 出てきます。
修理の決め方
このケースでは最も安く済む結果と最も高くつく結果の差がほぼ二桁あります。 だからこそ丁寧な点検に意味があるのです。原因を取り違えたときの損失は、 点検そのものの手間よりずっと大きくなります。
タイミング駆動系の交換を提示されたら、聞いておくべきことが二つあります。 ひとつは一式が含まれているか、つまりチェーン、テンショナー、ガイド、 スプロケットまで入っているか。摩耗したガイドに新品のチェーンだけ組んでも 音はすぐ戻ります。もうひとつは、オイル交換の履歴がその摩耗を説明できるか。 このエンジン系統では交換間隔の延ばしすぎとメーカー規格外のオイルが、 油圧部品が鳴きだす最大の原因です。使い方を変えないまま部品だけ替えても、 オーナーが期待するより短い期間しか静かでいてくれません。
その日の最初の始動でしか鳴らない音は、工場では捕まえにくいものです。 着く頃にはエンジンが暖まっているからです。朝、始動直後の数秒を Stukアプリで録音しておいてください。アプリは録音とあなたの回答を 突き合わせ、考えられる原因を割合つきで示すので、整備士に渡せる 材料になります。