足回りは車のなかで最もおしゃべりな部分です。ほとんどすべてのジョイントが、 摩耗すると固有の音を、固有の条件で出します。だからこそ耳で診るのが有効 なのですが、条件があります。手当たり次第ではなく、順番どおりにやること です。以下は三十分で終わり、リフトも要らず、たいてい候補を一つか二つに 絞れる五つのテストのチェックリストです。

五つのテスト、この順で

1. バウンステスト。 各フェンダーに体重をかけ、ぱっと放します。健全な ショックなら一回から一回半の動きでボディが収まります。三回以上揺れるなら 減衰が効いていません。押し込むあいだのきしみやカチッという音は別の合図で、 アッパーマウントかスプリングを指します。

2. 停車したままの操舵。 車を止めた状態で、ハンドルをゆっくり左右 いっぱいまで切ります。ストラット上部からのコリコリ音はアッパーマウント ベアリング。フロント周りからの打音はタイロッドエンドかステアリングラック です。

3. 小さな段差。 時速20〜30キロで、路面の継ぎ目、石畳、砂利の上を 窓を開けて走ります。スタビリンク、ブッシュ、傷んだアームのブッシュが 最もよく鳴るのがここです。缶の中の小石のような、乾いた速い打音になります。

4. 大きな段差。 ハンプや穴ぼこを時速30〜40キロで越えます。ボディに 伝わる鈍い単発の突き上げは、ショックアブソーバー、バンプストップ、 ボールジョイントです。

5. スラロームと制動。 時速60〜80キロでの滑らかな車線変更と、時速60 からの停止までの制動。いつもよりロールが大きく、操作後にふわふわ収まらない ならショックです。ブレーキ時の打音はアッパーマウント、ボールジョイント、 あるいはブレーキそのものです。

音の対応表

音と条件最も可能性の高い部品
小さな段差での乾いた速い打音スタビリンク、ブッシュ類
大きな穴ぼこでの鈍い突き上げショックアブソーバー、バンプストップ
バウンステストやゆっくりした穴ぼこでのきしみアームのブッシュ、劣化したゴム
停車して操舵したときのコリコリ音アッパーマウントベアリング
発進時と制動時の打音ボールジョイント、アームのブッシュ
速度とともに大きくなる唸りハブベアリングかタイヤ

この表は仮説を選ぶためのもので、点検の代わりにはなりません。同じ音が 車種によって別の部品から出ますし、最後の判断はリフトに上げてバールで 確認した結果に属します。路面から出る音の全体像は症状ページ 足回りの打音 にまとめてあります。

足回りではないもの

このチェックリストには、よそから来た音が紛れ込むことがよくあります。 車を止めてエンジンをかけた状態で聞こえる打音は、足回りとは無関係です。 特定のエンジン回転数で床下からするビビリ音は、たいてい遮熱板か排気系の マウントです。発進や変速のときの突き上げと打音は、アーム類よりも ミッションとエンジンマウントであることのほうが多くなります。

便利な原則があります。音が路面に追従するなら足回り。駆動と変速に追従 するならミッションとマウント。停車中にエンジン回転数に追従するなら エンジンと補機類。この三つの問いで、まちがった仮説の大半は消えます。

点検のあとに起きること

修理に同意する前に知っておくとよいことが二つあります。第一に、足回りの 部品は左右セットで交換するのが基本です。とくにショックとスプリングは そうです。片側だけ新品で反対側がへたっていると、車の挙動が左右で 変わってしまいます。

第二に、アーム、ボールジョイント、ブッシュを交換したあとのアライメントは おまけの追加項目ではありません。これらの部品がジオメトリーを決めている 以上、省けば数千キロでタイヤが食われる形で表に出てきます。見積もりに 新品アームが入っているのにアライメントがないなら、作業前に確認しておく 価値のある点です。

チェックリストのなかで何をどのテストで見つけたかを書き留めておき、その 言葉で説明するのも有効です。 車の異音を整備士にどう伝えるか に、伝わる言い回しをまとめてあります。

チェックリストは録音があると進めやすくなります。段差を越えながら Stukアプリで録音を始め、速度や条件についての質問に答えてください。 アプリは音とあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因を割合つきで 示します。整備士に持っていくリストが、短く具体的なものになります。