カムフェーザーは、カムシャフトのスプロケットに付いたアクチュエーターで、 チェーンに対してシャフトを回転させ、バルブの開閉時期を変える部品です。 トヨタはVVT-i、ホンダはVTC、BMWはVANOSと呼びますが、原理は同じで、 このアクチュエーターは油圧で動きます。摩耗したフェーザーが冷間始動で いちばん大きく鳴り、数秒で音が消えるのは、まさにそのためです。

なぜ冷えているときだけ鳴るのか

車を止めているあいだに、アクチュエーターとその通路の中のオイルは オイルパンへ落ちていきます。始動直後の数秒は油圧がなく、ローターが ロックされていません。羽根が室の中で暴れ、バルブスプリングからの 振動が来るたびに壁を叩きます。

そのために、健全なアクチュエーターにはロックピンが付いていて、油圧が 立ち上がるまでローターを機械的に固定します。摩耗するのはまさにここ です。ピンとその座面が打たれて広がり、ロックが効かなくなる。すると オイルが回ってくるまでアクチュエーターは鳴り続けます。摩耗が進むほど、 そして規定の油圧に達するまでが長いほど、音は長引きます。

どんな音か、何と間違えるか

典型的なのは、始動して最初の1〜3秒の乾いた硬いガラガラ音で、ディーゼル のような音に聞こえます。出どころはエンジンの前側の上のほう、 ヘッドカバーのあたりです。そのあとは何事もなかったかのように なめらかに回ります。

音の「ご近所さん」はこうです。

  • ラッシュアジャスターは、もっと静かで、もっと均一で、もっと長く 鳴ります。秒ではなく分の単位です。
  • タイミングチェーンはテンショナーがへたるとフロントカバーから ザラザラ、カタカタという音を出します。これも短時間です。
  • インジェクターは温度に関係なく常にカチカチ鳴っています。

似た音の全体地図は、症状ページの 冷間時のエンジンからの打音に まとめてあります。

原因はアクチュエーター、バルブ、オイル

カムフェーザーの異音は、必ずアクチュエーター内の油圧の話です。そして その油圧を調整しているのが電磁式のOCV、オイルコントロールバルブです。 つまり犯人は三つです。

  1. アクチュエーター本体。 ロックピンが打たれて広がり、羽根も摩耗 しています。交換でしか直りません。
  2. OCVとそのスクリーンフィルター。 スラッジで固着したバルブや 目詰まりしたスクリーンはオイルの供給を遅らせ、アクチュエーターが ロックされない時間を長くします。バルブの清掃や交換は、アクチュ エーターよりずっと軽い作業で済みます。
  3. オイル。 量が少ない、メーカー指定から外れた粘度、交換間隔の 引き延ばし。どれも始動直後の「乾いた数秒」を長くします。いちばん 手軽で、いちばん多い原因です。

どの段階かを判断する

症状の出方考えられる原因どこから手をつけるか
1〜2秒の音、毎回ではないロックピンの初期摩耗指定どおりの新しいオイル
毎回の始動で3〜5秒アクチュエーターの摩耗、OCVの目詰まり診断、OCVの清掃
音に加えてアイドル不安定とチェックランプ指示どおりのバルブタイミングが出ていない今週中に工場へ
暖まってからも聞こえるアクチュエーターの深い摩耗交換。多くはチェーンと同時に

音は全体像の一部にすぎません。摩耗したアクチュエーターは、出力、燃費、 アイドリングの安定を少しずつ悪くしていきます。加速の谷から故障コード まで、症状はひとつながりで進んでいくと考えてください。

修理はどう決めるか

手軽なところから順に進めます。まずメーカー指定どおりのオイルと フィルターの交換。次にOCVの点検と清掃。それでも音が残るなら、診断機で 実際のバルブタイミングが指示値からどれだけ遅れているかを見ます。

アクチュエーターの交換は、ほぼ必ずタイミングチェーンとセットになります。 部品が隣同士で、工賃の大半が共通だからです。作業内容には、二つのうち どちらをなぜ交換するのか、そしてOCVのスクリーンを清掃したかどうかを 明記してもらってください。目詰まりしたスクリーン越しにオイルを供給 される新品のアクチュエーターは、古いものとまったく同じように鳴きます。

何年も引っ張るのは得策ではありません。打たれて広がったアクチュエーター はチェーンの摩耗を早め、エンジンは力を失い、燃料を余計に使うように なります。

鳴っているのがフェーザーかどうか自信がないときは、冷間始動をStukアプリ で録音してみてください。アルゴリズムが音を典型的なプロファイルと比べ、 音の出るタイミングと長さについてのあなたの回答も加味して、考えられる 原因を緊急度つきで表示します。