車は停まっていて、ギアはニュートラル、クラッチはつないだまま。そこへ エンジンルームから、以前はなかった均一なうなりが聞こえてくる。クラッチを 踏むと、そのうなりが引いていく。この症状はあまりに分かりやすく、これ だけで部品をかなりの確度で特定できます。ほとんどの場合、マニュアル ミッションのインプットシャフトのベアリングです。なぜこういう鳴り方を するのか、似た音は何か、修理をどう決めるのかを見ていきます。
なぜニュートラルでうなるのか
ニュートラルでクラッチをつないでいるとき、ミッションのインプットシャフト はクラッチディスクを介してエンジンとつながり、一緒に回っています。歯車は 無負荷で回り、トルクは伝えていませんが、シャフトのベアリングは働いて います。摩耗したベアリング——軌道面が傷んでいたり、転動体が形を失って いたり——は、その回転数で均一な低いうなりを出します。
クラッチを踏んだ瞬間、ディスクはフライホイールから離れ、インプット シャフトは駆動を失って止まります。うなる相手がいなくなり、音は消えます。 「つないでいるとうなる、踏むと静か」というこの関係が最大の手がかりです。 逆にクラッチを踏んだときに音が出るなら、それはレリーズベアリング側です。
似た音を出すもの
| 音源 | ふるまい | 違い |
|---|---|---|
| インプットシャフトのベアリング | ニュートラルでうなり、クラッチで静かに | ペダルに連動する |
| レリーズベアリング | ニュートラルでは静か、踏むと鳴く | ちょうど裏返し |
| ミッションオイル不足 | 冷間時と高温時にうなりが増す | 十分で油量確認できる |
| オルタネーター、アイドラーのベアリング | ペダルにもギアにも無関係にうなる | ベルトを外せば分かる |
| ウォーターポンプ | 均一なうなり、冷却水の滲みを伴うことも | クラッチと無関係 |
だから、お金を節約できる確認の順番はこうなります。まずクラッチペダル、 次にオイル量、ミッションを開ける話はそのあと。走行中の音も聞いておく 価値があります。停車中のうなりに加えて、特定の速度域で出るうなりが混ざって いるなら、話は変わってきます。クラッチペダル周りの音は クラッチを踏むとパキパキ鳴る も参考になります。
自分でできる確認
- ペダルテスト。 エンジンを暖め、ニュートラルのままクラッチを ゆっくり数回踏んで戻し、音の変化を聞きます。ペダルとの明確な連動が あれば、それはほぼ診断そのものです。
- 冷間と暖機後。 始動直後と、20分ほど走った後の二回聞き比べます。 オイルが原因のうなりはミッションが温まると弱まることが多く、機械的 摩耗はそうなりません。
- オイル量。 エンジンを止め、平らな場所に置いてから、レベルゲージ または注入プラグで確認します。考えうる原因の中でいちばん安いものです。
- ベルトテスト。 工場では補機ベルトを数分だけ外します。それでも うなりが残れば補機類は除外できます。走行中の音の全体像は症状ページ 走行中のうなり音 に、うなったまま走れるかについては ミッションがうなったまま走れるか にまとめてあります。
修理をどう決めるか
この作業でいちばん重要な事実は、ミッションを降ろさなければならない、と いう一点です。ここからすべてが決まり、はっきりした結論が一つ出ます。 ベアリングのためにミッションを降ろすなら、クラッチも同時に交換する。 クラッチはすぐそこにあり、工賃はもう払っていて、一年後に別作業でやれば その工賃をもう一度払うことになります。
同じ理屈が、リアメインシール(クランクの後ろ側のオイルシール)や レリーズベアリングにも当てはまります。どれもミッションを降ろした状態で しか触れない小物です。これらを見積りに入れている工場は水増ししている のではありません。触れていない工場には、こちらから聞いてみる価値があり ます。
均一で小さなうなりは、いますぐ車を止める理由にはなりません。何か月も そのまま乗る人もいます。修理を計画すべきなのは、音がゴロゴロという低音に 変わったとき、振動が出はじめたとき、ドレンのマグネットに金属片が付く ようになったときです。それはベアリングがすでに崩れはじめている合図です。 ギア入りのゴリゴリ音が加わった場合は ギアを入れるときのゴリゴリ音 も見てください。
うなりが小さくて、本当にペダルに連動しているか自信が持てないなら、 クラッチをつないだ状態と踏んだ状態の両方をStukアプリで録音してください。 アプリが録音と回答を突き合わせ、考えられる原因を確率つきで、そして入庫前 に確認しておくべきことと一緒に示します。