氷点下20度での最初の走行は、乗り慣れた車を別物に変えます。室内は舗装の 継ぎ目ひとつひとつにきしみで応え、ドアは閉めるときにカチッと鳴り、 ダッシュボードは夏には出したことのない音を出します。厳しい冬なら、たい ていの車でこれは季節の相場です。ここでは寒さで実際に何が変わるのか、 どの音は放っておけば収まるのか、そしてどこで寒さが本物の不具合を暴いた だけなのかを見ていきます。

寒さが素材にすること

内装パネルの樹脂は冷えると縮み、弾力をはっきり失います。夏はクリップに きっちり収まっていた部品が、冬には0コンマ数ミリの自由を得て、段差のた びに互いにずれはじめます。夏は柔らかく弾力のある接触だったところが、 冬は乾いた硬い接触になる。それがきしみです。

ゴムにも同じことが、もっと強く起きます。ドアやウインドウのシールは硬く なり、微小な衝撃を吸収する能力を失い、ボディがたわむたびにきしみます。 振動を吸うゴムの筒であるサスペンションのブッシュも寒さで硬くなり、アー ムは高い周波数の音をより多くボディへ伝えます。

もう一つの要因が水分です。秋にパネルの合わせ目に入り込んだ結露が冬に 凍り、すきまの氷が楔として働きます。部品が押し広げられ、固定が緩み、 最初の雪解けのあと、それまでなかったきしみが現れます。

季節性の音と、本物の音

冬の正常点検が必要
最初の10分のダッシュボードのきしみはい、暖機で収まる一日中続くなら
ドアシールのきしみはい、ゴムの手入れで解決ドアの建て付けが緩んでいるなら
駐車場から動き出すときの足まわりのゴリッ凍った泥であることが多い暖まってからも鳴るなら
冷間始動時のエンジンの打音始動から数秒1分以上続くなら
一晩外に置いたあとのブレーキの引きずり音最初の2〜3回の制動まったく収まらないなら

判定基準は単純です。冬の音は暖まれば消え、暖まった車では出ません。暖機 後も生き残る音は、季節とは無関係です。とくにエンジンルームについてはそ うです。1分たっても収まらない冷間時の打音については エンジンの打音が出たまま走れるか で扱っており、音の実例は症状ページ 冷間時のエンジン打音にあります。

寒くなる前にやっておくこと

準備は30分で終わり、冬のきしみの大半を消せます。

  1. ゴムの手入れ。 ドアとトランクのシールを乾拭きし、シリコングリス を塗ります。きしみ防止とドアの凍結防止を兼ねます。
  2. ドアの機構に注油。 ロック、ヒンジ、ドアチェック。氷点下で開ける ときにカチカチ、ギシギシ鳴るのは、まさにここです。
  3. 室内を乾かす。 濡れたマットは冬、結露の供給源になり、その水分が パネルの合わせ目に落ち着きます。
  4. 転がっているものを片づける。 小物入れの小銭や固定していない荷物 は、寒いほど大きく鳴ります。足まわりが硬く、冷たい空気では音が鋭く なるためです。
  5. 固定を確認する。 緩んだ内張りのクリップは夏には無音で、冬には そうではありません。探し方は 室内のカタカタ音ときしみの探し方 にまとめてあります。

冬前点検で見るもの

シーズン前の現実的なリストは、リフトでの足まわり点検、冬に下から出る きしみの定番であるスタビライザーブッシュへの目配り、そして下回りの締結 部とアンダーカバーの確認です。寒くなってからショックアブソーバーが打音 を出しはじめたなら、それは別件として扱います。

知っておく価値のあることが二つ。氷点下でだけきしむゴム部品は、寿命では なくまだ使えることが多く、冬前にスタビライザーブッシュへシリコンを塗る のは正当な対処であって、ごまかしではありません。もう一つ、寒いときだけ 打音を出すショックアブソーバーは話が別です。冷えたオイルは粘度が高く、 バルブが減ったショックは低温でまず本性を出します。冬にストラットから出 る打音は、春まで待たずに真面目に受け止めたほうがいい理由です。

季節性のきしみと本物を見分けるいちばん簡単な方法は比較です。走り出して 最初の1分の音をStukアプリで録音し、30分後に暖まった車で同じ録音を繰り 返してください。二本目がきれいなら寒さのせい、音が残っているなら、アプ リがどの部品から確認すべきかを提案します。