ダッシュボードのビビリ音が故障を意味することはまれですが、車の印象は確実 に損ないます。滑らかな舗装では静かなのに、コンクリートの継ぎ目に乗った瞬 間、ダッシュのどこかで細かくパリパリ鳴る。厄介なのは捕まえにくさです。車 を停めて樹脂を手で押さえると、もう鳴らない。音がどこから来るのか、一度の 走行で接触点を見つける方法、そしてダッシュボードがまったくの無実である場 合をまとめます。

なぜ樹脂が鳴り出すのか

ダッシュボードは一つの部品ではなく、十数点の内装パーツ、ダクト、ブラケッ トをクリップとねじで組み上げたものです。その間には製造上の隙間が意図して 設けてあります。樹脂は熱で膨らみ、寒さで縮むので、隙間がなければ単純に波 打ってしまうからです。合わせ目がシールやフェルトで押さえられているうちは、 部品同士は音もなく動きます。

時間が経つとフェルトは擦り減り、クリップは保持力を失い、樹脂自体も長年の 温度変化でわずかに歪みます。コンマ数ミリの自由な動きが生まれ、ちょうどよ い振動数になると二つの部品が毎秒何百回も互いを叩き始めます。だから特徴的 な出方をします。どんな段差でも鳴るのではなく、特定の路面、あるいは特定の 回転数、つまり共振が揃うところで鳴るのです。

接触点の見つけ方

探し方の要は一つ、走りながら疑わしい場所を手で押さえることです。音が消え たら、そこが音源です。

  1. 条件を特定する。 細かい波打ち舗装、大きな伸縮継ぎ目、信号待ちのアイ ドリング。どれも別の振動数を指し、候補を絞ります。
  2. 同乗者を連れる。 運転しながらダッシュを触って回るのは不自然で危険で す。同乗者なら落ち着いて一枚ずつ押せます。
  3. 区画ごとに押す。 フロントガラスとダッシュ上面の合わせ目、サイドの吹 き出し口、グローブボックスの蓋、オーディオまわりのパネル、ドア際のピラ ー。
  4. 中身も確認する。 小物入れの小銭、ダッシュ上の眼鏡、吸盤で付けたドラ イブレコーダーとそのケーブル。室内のビビリ音の半分近くはこれです。

同じやり方はドアや内張りの音にも使えます。手順は 室内のビビリ音ときしみの探し方 に詳しくまとめています。

音源になりやすい場所

場所現れ方直し方
ダッシュ上面とフロントガラス小さな段差での鋭いパリパリ音フェルトや防振テープを挟む
グローブボックスの蓋大きな継ぎ目での鈍い打音ヒンジの締め直し、縁のシール
エアの吹き出し口アイドリング時の細かいビビリルーバーの固定、ハウジングの増し締め
オーディオの枠スピーカーの低音に音が追随する枠まわりのシール
メーターユニット暖機中は鳴り、その後静かメーターを外して取り付けを締める
ダッシュ裏の配線不規則な打音、路面と無関係結束バンドでハーネスを車体に固定

万能薬は防振材です。薄い粘着フェルトを隙間に貼ります。自由な動きをなくす わけではありませんが、接触が柔らかくなり、打撃が無音の触れ合いに変わりま す。

ダッシュボードが犯人でないとき

樹脂は共鳴板にすぎず、原因がもっと奥にあることもあります。特定の回転数で きっちり出て路面に追随しないなら、エンジンマウントを確認してください。摩 耗したマウントは振動を車体へ流し、ダッシュボードが真っ先に応えます。詳し くは エンジンマウント劣化の症状 に。音が下から来て段差で出るなら、足回りのほうが有力です。室内の音と床下 の音を分けるには、症状ページ 段差での打音 の説明と、 段差での室内のきしみ を自分の事例と比べてください。寒い時期だけの音なら 冬の室内のきしみ が近いはずです。

室内から出ているように「見えるだけ」の音のグループもあります。ミッション のうなりやウォーターポンプの音は隔壁を簡単に通り抜け、「ダッシュのどこか」 の音として知覚されます。それぞれ うなるミッションのまま走ってよいかうなるウォーターポンプのまま走ってよいか を参照してください。

作業を頼む前の実務的な注意をひとつ。室内のビビリ音は部品ではなく時間で請 求され、高くつくのは探す工程です。どの路面か、どの速度か、温度で変わるか、 という条件を正確に伝えることが、その探索を短くします。押さえると音が止ま るパネルをすでに見つけているなら、まずそれを伝えてください。

ダッシュが鳴っているのか、その奥の何かが鳴っているのか判断できないときは、 室内からStukアプリで録音してください。アイドリング時と走行時の二本です。 アプリが録音といくつかの回答を突き合わせ、考えられる音源を割合で示すので、 当てずっぽうでダッシュを分解する必要がなくなります。