オイル交換はいちばん多い整備であり、そのあとの打音は後味の悪い定番の 訴えです。正しいことをしたのに、エンジンが鳴りはじめた。よい知らせは、 多くの場合その因果は思い込みか、油量・フィルター・粘度といった安く直せ るものだということ。悪い知らせは、まれに交換後の打音が本当に深刻な合図 であることです。以下、正常な範囲から、店に戻るべき筋書きまで順に見てい きます。

交換後の初回始動:短いカチカチは正常

交換ではオイルを抜き、新しいフィルターは空のまま取り付けます(多くのエ ンジンでは事前に満たせません)。初回始動でポンプがフィルターと油路を 満たすのに数秒かかり、そのあいだラッシュアジャスターは油圧なしで動いて カチカチ鳴ります。

正常はこう見えます。初回始動から5〜30秒のカチカチ、そのあとは静か。油圧 警告灯は1〜2秒で消える。音が消えて再発しなければ、これは介入不要の標準 的な筋書きです。仕組みと正常の境目については ラッシュアジャスターの点検方法 をご覧ください。

打音が残るとき:主な容疑者

何が変わったかどう出るかどうするか
指定外の粘度暖機後のカチカチ(柔らかすぎ)、冷間時の長いカチカチ(硬すぎ)伝票と取扱説明書を照合、オイル交換
油量不足カーブや加速で打音が大きくなる、警告灯が点くこともただちに補充
入れすぎオイルの泡立ち、不安定なカチカチ余分を抜く
逆流防止弁が働かないフィルター冷間始動のたびに長いカチカチまともなフィルターに交換
交換前のフラッシング打音が出て、しかも大きくなる診断、場合によりもう一度オイル交換
偽物のオイル数百キロで打音、オイルが黒い信頼できるところでオイルとフィルターを交換

粘度。 いちばん多い実際の原因です。何年も硬めのグレードで走ってきた 摩耗したエンジンは、流行の柔らかいオイルに替えると暖機後に打音を出すこ とがあります。柔らかいオイルは広がったすきまを保ちにくいからです。逆方 向の変更もストレスで、硬いオイルは氷点下でアジャスターまで届くのが遅く なります。基準はエンジンメーカーの指定で、そこに摩耗と気候を加味します。

油量。 不足は油膜切れのリスクです。ポンプが空気を吸い、圧が落ち、 アジャスターが鳴き、悪くするとクランクのメタルが打音を出します。入れす ぎは見た目より厄介で、クランクがオイルを泡立て、泡はうまく送れません。 平らな場所でのレベルゲージ確認は1分で終わり、疑問の半分を消してくれます。

フィルター。 フィルターには、駐車中にオイルを油路へ留めておく逆流防 止弁が入っています。安いフィルターではこれが渋かったり漏れたりし、一晩 でオイルが落ち、毎朝が交換前にはなかった長いカチカチから始まります。

フラッシング。 過走行のエンジンへの強力なフラッシングは堆積物を剥が し、それがオイルストレーナーや油路を塞ぐことがあります。フラッシング付 きの交換のあとに打音が出て、しかも大きくなっているなら、早めの診断の 理由になります。

あまり言われない細かい話が一つ、方法についてです。上抜きの交換ではレベ ルゲージの管からオイルを吸い出すので、ドレンボルトからの下抜きより、古 いオイルと沈殿物がオイルパンに多く残ることがあります。それ自体が失敗で はありませんが、オイルに敏感でカチカチ鳴るエンジンなら、次はドレンを 抜いての自然排出のほうが賢明です。抜いたオイルに金属粉があるかどうかを 整備士が見られる利点もあります。

原因ではなく、偶然の一致

もう一つの筋書きがあります。交換がなくてもエンジンは鳴っていた、という 場合です。整備のあとオーナーは車の音を聴きはじめ、以前から静かに存在し ていた音を「聞きつけて」しまいます。加えて、新しいオイルが、古く硬い オイルで覆い隠されていた摩耗を正直に暴くこともあります。音の性格が助け になります。上からのカチカチはアジャスターとバルブまわり。ブロックの 奥からの鈍く低い打音はメタルで、こちらは待てません。カチカチの色合いを 整理するには症状ページ エンジンのカチカチ音エンジンのカチカチ音は危険か をご覧ください。

打音と一緒に出ると不穏なのが、油圧警告灯、あるいはアイドリングでのちら つきです。ここまで来るともう音の話ではなく、圧力の話です。

手順

  1. 油量を確認する。 平らな場所で、冷間時にレベルゲージで。必要に応 じて補充または抜き取り。
  2. 伝票を探す。 入ったオイルを指定と照合します。粘度、承認規格、量。
  3. 駐車跡とフィルターを見る。 フィルターやドレンからのにじみは、 すぐ戻る理由になります。
  4. 音を判定する。 冷間時だけ上からのカチカチなら数日様子を見る。 暖機後の打音、ブロックからの鈍い打音、警告灯なら、走らずにその場で 原因を突き止める。
  5. 作業した店に戻る。 まともな工場は自分の仕事を無料で確認します。 記録された事実、つまり音の録音、レベルゲージの写真、伝票があると話が 早いです。

もう一度オイルを丸ごと交換しても、原因不明の打音を抱えて走った先に待つ どんな修理より安く済みます。

交換前と同じ音なのか、新しい音なのか決めかねるときは、Stukアプリでエン ジンを録音し、数日後にもう一度録音してください。アプリは音を典型的な原 因と突き合わせ、確率と緊急度を示します。録音どうしを比べれば、傾向にも 気づけます。