コンロッド打音は、ドライバーがもっとも恐れる音です。それも当然で、意味 するのはコンロッドメタルの摩耗、つまりコンロッドがクランクピンの上で回る ための平軸受が傷んだということだからです。よい知らせは、この打音には はっきりした特徴があり、何も分解しないうちに無害な音と切り分けられること です。早く気づくほど結末は安く済みます。ときにはエンジン1基分の差になり ます。

コンロッドメタルとは何か、なぜ叩くのか

メタルは、薄い鋼の半割にすべり層を貼った部品です。正常な状態では、 コンロッドがクランクピンに触れることはありません。油圧が百分の数ミリの 油膜、いわゆる油くさびを保っているからです。このくさびが効いているうちは、 ほとんど摩耗しません。

打音が出るのは、隙間が広がりすぎてオイルが埋めきれなくなったときです。 荷重の向きが反転するたびに、つまり1回転ごとに、コンロッドが隙間の分だけ 動いてピンを叩きます。隙間が広がる原因はたいてい油膜切れ、劣化オイルや 不適合オイル、油量不足のままの走行、あるいは単なる過走行です。油圧の 低下は、この摩耗の原因でもあり、同時に道連れでもあります。

進み方も理解しておいてください。傷んだメタルは発熱し、まわりのオイルを 熱し、摩耗した層は油くさびをいっそう保てなくなり、故障が自分で加速して いきます。だからコンロッド打音が「そこで落ち着く」ことはありません。必ず 進行し、問題は速さだけです。

どんな音か

エンジン屋が使う目印はこうです。

  • 中くらいの音程の鈍い金属音。動弁系のカチカチより低く柔らかく、 ブロックの奥から聞こえます。
  • 周期がクランク回転数と一致。アクセルに合わせて休みなく速くなります。
  • 負荷で大きくなる。加速時、登坂、エアコン作動時。症状ページは 加速時の打音です。
  • アクセルを戻したときと空ぶかしで際立つ。回転が落ちる過程での短い 連打です。
  • 暖まると大きくなる。熱で粘度の落ちたオイルは、広がった隙間で油くさび を保ちにくくなります。

初期には特定の条件でしか聞こえないこともあります。たとえば暖機後の空ぶかし のときだけ、という具合です。常時鳴るようになったら、それはもう後期です。

メインメタル(クランクジャーナルの軸受)も触れておきます。打音はもっと 低く鈍く、ブロックのいちばん下で感じられ、始動時と負荷時に大きくなります。 耳だけでコンロッドとメインを分けるのは、経験のあるエンジン屋でも難しい のですが、オーナーにとってはどちらでも同じです。どちらもクランクの軸受が 油くさびなしで回っているという意味で、走り続けるという選択肢はありません。

音に伴うサイン

コンロッドのシナリオが単独で来ることはまれです。間接的な裏付けはこうです。

  • 暖機後のアイドリングで油圧警告灯が点く、またはちらつく。
  • レベルゲージ、抜いたオイル、フィルターの中に金属の光りや切粉。 すべり層の破片です。
  • 圧力計で測った油圧が規定値以下
  • 音が進行する。週を追うごとに、より早く、より大きく聞こえる。
段階聞こえること内部で起きていること
初期暖機後の空ぶかしで鈍い連打隙間が限界値
中期負荷時の打音、アイドリングで油圧灯すべり層が摩耗中
後期どの領域でも常時大きな打音メタルが崩れはじめ
末期ガラガラ音、そして焼き付きかブロック破損メタル焼き付き、ピンに傷

紛らわしい音

「コンロッド打音」の半分は、診断すると別のものだと分かります。オーナーに とってはよい知らせです。主なそっくりさんはこうです。

  • ラッシュアジャスター ——上から鋭くカチカチ、周期はクランクの半分、 負荷にほとんど反応しません。確認方法は ラッシュアジャスターの点検方法 にあります。
  • ノッキング ——加速時だけ出る金属的なチリチリ音で、燃料に左右され、 アクセルを戻すと消えます。
  • ピストンピン ——鋭い二重の打音で、冷間時に出やすいです。
  • エンジンマウント ——発進や変速のときの単発の鈍い衝撃音で、リズムを 刻む打音ではありません。

大まかな法則はこうです。鋭い音は動弁系やノッキング、奥から来る鈍い音は クランクとその軸受。エンジン音の全体カタログは症状ページ エンジンからの打音にあります。 負荷をかけたときだけ出る打音は 負荷時のエンジン打音も参考に なります。

どう確定させるか

標準的な手順は1時間かかりません。聴診器でエンジンを聴き、ブロックの区画 ごとに打音を絞ります。次にシリンダーを1気筒ずつ休ませます(コイルや インジェクターのカプラーを抜く)。ある気筒を切ったときに打音が明らかに 変わるか消えれば、その気筒のコンロッドが犯人です。燃焼がなくなればその コンロッドへの衝撃荷重が大きく下がるからです。続いて機械式ゲージで油圧を 測り、フィルターに切粉がないか見ます。最終判決はオイルパンを外しての分解で、 メタルを目で見て決まります。

工場に行く前にオーナーができるのは、2つの条件で音を録っておくことです。 暖機後のアイドリングと、空ぶかしのとき。工場で頼まれてすぐ打音を再現でき るとは限らず、「20分走ると出る」といった条件付きの録音は、エンジン屋の 時間を節約し、誤診の確率を下げます。

そのあとどうなるか

コンロッド打音が確定したら、走行という選択肢はありません。リスクは エンジンの打音のまま走れるか にまとめています。

大事な注意がひとつ。ピンを点検せずに「新しいメタルを入れるだけ」は、 偽の節約です。ピンの表面がすでに傷んでいれば、そこに新品を入れても持たず、 数千kmで同じことが、より悪い結末で繰り返されます。まともな工場は、まず マイクロメーターでピンを測り、それから見積もりを出します。

もう2つ聞いておきたいことがあります。原因が見つかったか。オイルストレーナー の詰まり、摩耗したポンプ、伸ばしすぎた交換サイクルは、新しいメタルも同じ ように仕留めます。そして、古いメタルがすでにエンジン中に回した破片を、 オイルパンと油路から洗い出すか。

経済の話は単純です。早く止めて調べるほど、メタル交換で済んでクランクに 手を付けずに終わる確率が上がります。

コンロッド打音なのか、そっくりさんのどれかなのか判断がつかないときは、 Stukアプリでエンジン音を録音してください。典型的な打音と比較し、条件を 確認する質問をして、考えられる原因を緊急度付きで示します。分解の代わりに はなりませんが、どれだけ急いで工場に行くべきかの判断には役立ちます。