走っているときに出てきて、ブレーキを踏んだ瞬間に消える細い金属音。 はっきり金属の音なので不安になる方が多いのですが、これはブレーキが出せる 合図のなかでいちばん親切なものです。パッドの機械式摩耗インジケーターが 働き始めた音で、ローターがまだ無事なうち、普通の作業で済むうちに 教えてくれています。
インジケーターの仕組み
パッドの鉄板(バックプレート)には、曲げた板バネの爪が付いています。 摩擦材が十分に残っているあいだは爪がローターに届かないので、何も鳴りません。 パッドが薄くなってくると、爪の先が回っているローターに触れ始めます。 走行中の金属同士の接触は、ゴリゴリという音ではなく高い周波数の 「キーン」という音になります。爪でガラスをこすったような音を、 もっと大きく、もっと一定にした感じです。
当たり始めるタイミングは、運転する人に余裕が残るように決めてあります。 摩擦材が2〜3mmほど残った時点で爪がローターに届くのが一般的です。 その場で走行不能になるわけではありませんが、入庫の予約を入れる合図と 考えてください。
もうひとつが電気式のセンサーです。パッドの中に通した電線がローターに こすれて切れ、回路が開いてメーターに警告灯が点きます。こちらはまったく 鳴きませんので、音がしないことだけを根拠に「まだ大丈夫」とは言えません。
ほかの異音との見分け方
| 音 | 聞こえる場面 | 正体 |
|---|---|---|
| 一定の高い鳴き | 走行中に出て、踏むと止まる | 摩耗インジケーター |
| 軽く踏んだときのキュッ | 制動時だけ。朝や湿気の多い日に多い | ローター表面の皮膜、ダスト、パッドの材質 |
| ゴリゴリ、ガーッという音 | 制動時。ペダルにも伝わる | 摩擦材が尽きて金属が当たっている |
| ボンネットの中からの鳴き | エンジン回転に連動。冷間時に大きい | ファンベルト(補機ベルト) |
| 片輪から鳴りっぱなし | ペダルと無関係。そのローターが熱い | ブレーキキャリパーの固着 |
いちばんの分かれ目は、音がペダルにどう反応するかです。インジケーターは 走行中に鳴り、踏むと黙ります。ほかのブレーキ鳴きはたいてい逆です。 停車してエンジンをかけているだけでも同じ音が出るなら、ブレーキではなく 補機類を見てください。ブレーキ鳴き全体の整理は ブレーキの鳴きのページにまとめてあります。
交換の前に見ておくこと
点検自体は短時間で済み、無駄な出費を防げます。ホイールのすき間から 摩擦材の厚みはたいてい見えます。鉄板より少し厚い程度の帯しか残って いなければ、答えは出ています。ついでに見ておきたい点が三つあります。
ひとつ目は、減り方が均一かどうか。内側だけ明らかに減っているなら キャリパーがきちんと動いておらず、パッドを換えただけでは終わりません。 ふたつ目はローターの状態。外周の段付きや深い筋があると、新しいパッドが きれいに当たりません。三つ目は反対側のアクスル。リアのほうが長持ちする のが普通ですが、同じ機会に見ておくのが理にかなっています。
パッドは片側だけ鳴いていても、必ずアクスル単位で左右セット交換します。 左右で厚みが違うと、制動時に片側へ引っ張られるからです。
修理内容の決め方
作業範囲は二つの判断で決まります。ひとつはローターを残せるかどうか。 ローターには最小厚さが刻印してあり、それを下回っていればパッドがどれだけ 良くても交換になります。もうひとつはキャリパーの整備が要るかどうか。 偏摩耗していたなら、スライドピンの清掃とグリスアップを同じ入庫で やっておきます。やらなければ、新品パッドが数か月で同じ減り方をします。
工場側があまり言わないことがひとつ。新しいパッドとローターには 慣らしが必要です。最初の200〜300kmは急制動と、長い下りでペダルを 踏みっぱなしにする走り方を避けてください。摩擦材が均一に当たるように なります。
音が出てきたけれどインジケーターなのか別物なのか判断がつかないときは、 Stukアプリで録ってみてください。まずアクセルを戻して転がしているとき、 次に軽くブレーキを踏んだとき。アプリが録音と回答を突き合わせて、 考えられる原因を確率つきで示します。