冬の朝、オートマは違った振る舞いをします。アイドリングでミッションが唸り、 変速はショックとして体に伝わり、発進のときに鈍いゴツンが聞こえて、 数キロ走るとそのすべてが静かに消えていく。持ち主にとっては毎年の 心配の種ですが、たいていの場合その心配は過剰です。冷えているときの音の どれが油の物理で説明でき、どれが暖まったあとも症状として残るのかを 整理します。
冷えたミッションの音が大きい理由
オートマチックトランスミッションは、圧力の伝達と潤滑と冷却を同時に担う 油の上で動いています。氷点下では、その油がはっきり硬くなります。 ポンプは粘い液体をバルブボディの細い通路へ押し込まなければならず、 だから唸りの音程が上がり、アイドリングの騒音も増えます。圧力の立ち上がりが 遅くなり、クラッチのつながりが滑らかさを失い、変速は荒く感じられます。
二つ目の要因は熱によるすき間です。金属部品は作動温度域より寒いところで より縮んでいるので、いくつかの結合部のガタが少し大きくなります。 セレクターをPからDへ入れたときの鈍いゴツンが一回、夏より冬のほうが 目立つのはそのためです。暖まれば油は柔らかくなり、すき間は設計値に戻り、 ユニットは静かになります。
どこまでが正常で、どこからが違うか
| 音 | 正常なのは | 心配なのは |
|---|---|---|
| アイドリングでの唸り | 走り出して5〜10分で消える | 暖まっても残り、速度とともに大きくなる |
| PからDでのゴツン | 単発で、静か | 強いゴツン、つながるまでの間がある |
| 荒い変速 | 最初の数キロだけ | 熱くなっても残る |
| 加速時の高い唸り | 本来出ないもの | 負荷時に一定して聞こえる唸りはすべて |
| 回転だけ上がる | 本来ないもの | 回転は上がるのに加速しない |
決め手は暖機です。温度とともに消えるものはすべて油の粘度に属します。 熱くなっても残るものはユニットの状態に属し、診断が必要です。 二つ目の基準は傾向です。去年の冬よりはっきり大きくなった音は、 まだ暖まれば消えるとしても確認する価値があります。ショックの出方に ついては オートマの変速ショックとゴツン音 に、負荷時の唸りの初期サインについては オートマの唸り、初期のサイン にまとめてあります。
ミッションとその隣人を混同しないために
冬は多くのものの音が大きくなり、その一部が誤ってオートマのせいに されます。寒いとサスペンションは硬くなります。ゴムのブッシュが 硬化しているので、最初の数キロのカタカタ音は、ミッションではなく たいていスタビライザーまわりです。確認のしかたは スタビリンクの打音:自分で点検する方法 にあります。ギアではなく速度に依存する唸りは、たいていハブベアリングです。 その扱いは 唸るハブベアリングのまま走れるか にまとめました。信号待ちでギアを入れたまま、低い唸りを伴って 車が震える件は症状ページ アイドリング時の振動にあります。
簡単な確認は一回の走行で済みます。音がどの速度でも同じで、エンジン回転数 だけで変わるならパワーユニット側を、ギアに関係なく速度とともに大きく なるなら足まわり側を見てください。
どうするか、そして判断の決め方
冬の実務的なプログラムは短いものです。最初の数キロは無理をしないこと。 油が温まるまでは回転をおとなしく保ち、急発進を避けます。氷点下で、 ブレーキを踏んだままDに長く入れておかないこと。そして季節に一度は 油量と油の状態を見ること。焦げた匂いのする黒ずんだ油は、実はとっくに 季節性ではなくなっていた「冬の」相談のかなりの部分を説明してくれます。
油の交換はすり減ったユニットを治しはしませんが、長く交換していなかった 場合には、音とショックの一部を取り除くことがよくあります。やるかどうかを 決めるのは暦ではなく、走行距離と油の状態です。そしてクラッチがすでに 減っている高走行距離の車では、交換が事態を悪くすることもあります。 判断が診断の前ではなく後に来るのはそのためです。唸りが出ている状態で どこまで走れるかは 唸るミッションのまま走れるか にまとめてあります。
整備士が必ずしも言わないことが二つ。銘柄より油の規格のほうが重要です。 摩擦調整剤が違うと、まさに治そうとしていた荒い変速が出ます。 それから学習機能のあるミッションは、油の交換や学習の初期化のあと、 すぐにではなく数百キロかけて振る舞いを変えていきます。 再点検のために出直してほしいという依頼は、請求を引き延ばす試みではなく 通常の手順です。工場での余計な提案の見分け方は 工場で余計な作業を売られないために にあります。
自分の車の音が正常の範囲かどうか自信が持てないときは、二回の走行を Stukアプリで録ってください。冷間始動直後の数分と、同じ道を二十分後に 走ったとき。二つの録音の差が答えです。アプリが温度と走行条件についての 回答と突き合わせて、考えられる原因を確率つきで示します。