左カーブや、ゆるやかな左への車線変更で出はじめる、あるいは大きくなる うなり音は、クルマの音のなかでもとくに「よくしゃべる」音です。不具合が あることを伝えるだけでなく、どちら側を見ればいいかまで教えてくれます。 たいていはハブベアリングが自己申告しているのですが、なぜカーブで鳴るの か、一回の走行でどう裏を取るのか、どれだけ急ぐ話なのかを見ていきます。
「左」が「右」を意味する理由
カーブでは車体が外側に傾き、車重が外側のホイールへ移ります。左に曲がる、 あるいは左へ車線を変えるときに荷重がかかるのは右側です。質量のかなりの 割合が右のハブベアリングを押し、摩耗した軌道面がより強く押しつけられ、 うなりが大きくなります。内側になる左のホイールはそのとき荷重が抜けるの で、左のベアリングが傷んでいても左カーブでは静かになります。
そこから、覚えておいて整備士にも伝えられる法則が出てきます。左に曲がる とうなりが強まるなら右のベアリング、右に曲がって強まるなら左のベアリン グ。この法則が効くのは時速40〜60キロ以上のゆるやかなカーブです。駐車場 での据え切りに近い小回りでは別の部品も絡んできて、話がぼやけます。
一回の走行で裏を取る
- 車線変更テスト。 すいた直線路で時速60〜80キロを保ち、軽く左に振り、 次に右へ振ります。右カーブで音が小さくなり左カーブで大きくなれば、 右側のベアリングの絵柄です。
- 惰性走行テスト。 うなりが聞こえる速度まで加速し、ニュートラルで 惰性走行します。音が残るなら、音源はホイールと一緒に回っているもので、 エンジンとミッションは容疑から外れます。
- 路面テスト。 舗装の違う区間を走ります。ベアリングはどこでも同じ ように鳴りますが、タイヤの音はきれいな舗装で変わります。
三つとも一致すれば、ハブベアリングの可能性はかなり高いといえます。音の 特徴は症状ページ ハブベアリングのうなりにまとめてあります。
カーブで鳴るほかの原因
| 音源 | ベアリングとの違い |
|---|---|
| パワステポンプ | 停車したままハンドルを切ると鳴り、速度とは無関係 |
| タイヤの音 | 路面で変わり、左右どちらのカーブでも同じ |
| アウター側のドライブシャフト | うなりではなく、駆動をかけた小回りでのカチカチ音 |
| デフ、ミッション | 駆動に連動し、加速時と惰性走行で音が変わる |
| リアのベアリング | 荷重移動の理屈は同じだが、音が後ろから来る |
見分けの軸は「音が何に連動しているか」です。速度と操作の向きに連動する うなりは足まわり。走っているかどうかに関係なく、ハンドルを切ると出る うなりはパワステ。ゴリゴリ、カチカチはジョイント系です。自分のケースが どのグループなのか決めかねるときは、症状ページ カーブでうなり音に一覧があります。
修理はこう決まる
ベアリングは左右セット交換ではなく、傷んだ側だけを替えます。ただし点検 のときに両側を見てもらう価値はあります。反対側も同じくらい進んでいるな ら、少なくとも次に何が来るか分かります。
作業そのものを左右するのは二点です。ひとつは車種の造りで、既存のハブに 圧入するタイプのベアリングか、ハブごと交換するアッセンブリーかによって、 費用も時間も変わります。今どきのクルマではABSセンサーがそのアッセンブ リーの中にあることが多く、ベアリングが逝くと警告灯まで一緒に点くのはそ のためです。もうひとつはハブナットの締付トルクで、ここは他の作業以上に 効いてきます。締めすぎでも緩すぎでも、新品のベアリングは数千キロで壊れ ます。
急ぎ具合
ベアリングが突然壊れることはまずありません。最初のうなりから危険なガタ まで、ふつうは数千キロあります。逆に、これが出たら先送りしてはいけない のは、均一なうなりではなくゴロゴロした音になる、車体やハンドルに振動が 出る、ホイールにガタがある、走ったあとハブが熱い、といったサインです。 この段階ではリテーナーが崩れはじめており、残りは数千キロ単位では数えら れません。最初の数週間のうちに片づけたほうが、安上がりで気も楽です。
うなりがまだ小さく、気のせいかどうか確かめたいときは、車線変更テストの 最中にStukアプリで音を録ってみてください。アプリは録音とあなたの回答を 突き合わせ、考えられる原因を確率つきで示し、どちら側から手をつけるべき かも提案します。