シリンダー内壁の傷(かじり)という話題は、ヒュンダイとキアのエンジンに すっかり貼りついてしまいました。あまりに貼りついたせいで、ソラリス、 リオ、スポーテージ、ツーソンのオーナーはボンネットの下から出るどんな音 も反射的にこれに当てはめてしまいます。実際はもっと穏やかで、たいていの 打音にはもっと安く済む別の説明がつきます。とはいえ、シリンダー傷には固 有の音の署名があり、知っておく価値はあります。少なくとも「聞く」段階か ら「測る」段階へ移るタイミングが分かるからです。

傷とは何で、なぜ音が出るのか

傷とは、ピストンが上下するシリンダー壁の損傷、つまり溝や引きちぎられた 面のことです。これがあるとピストンリングの密閉が失われ、圧縮が落ち、 オイルが燃焼室へ入りはじめます。ピストンと壁のすきまが広がると、上死点 を越える瞬間にピストンが首を振る自由度を持ち、スカートが壁を叩きます。 整備士がピストンスラップと呼ぶ音です。鈍く、こもっていて、回転に同期し、 ブロックの下寄りから聞こえます。

損傷の原因はさまざまです。異物がシリンダーに入る、油膜切れ、オーバー ヒート、ノッキングを抱えたままの長時間運転、質の悪い燃料、オイル交換の 引き延ばし。実際には一つの要因だけで起きることは少なく、たいてい複数が 重なります。

音の人相書き

特徴シリンダー傷よくある他の原因
音色鈍くこもった打音カチカチ、キンキン、ガラガラは当てはまらない
リズム回転に同期して均一インジェクターはもっと速く細かい
暖機初期は暖まると静か、末期は消えないバルブクリアランスはほぼ必ず薄れる
負荷負荷時と加速時にはっきりする補機類はふつう負荷に反応しない
併発する症状オイル消費、力の低下、白煙・青煙補機やタイミング系にはこれがない

いちばんの決め手は打音そのものではなく、それが連れてくる仲間です。傷が 単独で現れることはほとんどありません。音と一緒に、交換の合間に足すオイ ルの量が増え、アイドリング後に急にアクセルを開けると青みがかった煙が出、 加速のしなやかさが失われ、回転の保ちが悪くなります。こうした連れがまっ たくない音は、チェーンや動弁系、補機類であることのほうがはるかに多いの です。切り分けの理屈は アイドリング時のエンジン打音で扱って います。このグループの音の総覧は症状ページ エンジンの打音にあります。

よく似た打音との区別

まず外すのはタイミング系です。伸びたチェーンは、負荷時の均一な打撃では なく、始動時やアクセルを戻したときのガラガラ、ザラザラという音を出しま す。次は動弁系。こちらのカチカチは明るく高く、シリンダーヘッドの上のほ うから聞こえ、たいてい暖機で消えます。三つ目は補機類で、ベルトを外して 音が消えるなら、ピストン系は無関係です。

そこから測定が始まります。圧縮圧力測定で、一〜二気筒だけ落ちていないか が分かります。プラグ穴からの内視鏡で壁を直接見れば、浅い痕と深い溝を見 分けられます。実際のオイル消費量を出しておくのも有効です。走行距離に ひもづけた継ぎ足し量は、印象よりずっと正直な指標になります。車種別の 近い事例は G4FCのカチカチ音:正常かシリンダー傷か にあります。

どう判断するか

ここでは診断とオーバーホールの間の落差が非常に大きく、だからこそネット の動画で自己診断してもいけないし、限界まで引っ張ってもいけません。まと もな順番は、音を録る、次の1000キロでオイル消費を追う、そのうえで圧縮 測定と内視鏡検査を受ける。この三段階の費用は、どちらの方向に間違えた 場合の損失とも比べものになりません。

整備士がいつも言うとは限らないことが二つ。オイル消費は、意味のある数字 にするには正しく測る必要があります。同じ平らな場所で、同じ温度で油量を 見て、計測の間の走行距離を書き留めること。それと、口頭の判定ではなく 内視鏡の写真をもらってください。軽いホーニング痕と深い溝の違いが、様子 を見るか開けるかを決めるのであり、それは画像に写ります。

最初の一歩にはStukアプリが便利です。冷間時と暖機後の音を録り、負荷で変 わるかを記録し、オイル継ぎ足しについての質問に答えてください。アプリは 考えられる原因を確率つきで示し、工場でまずどの測定を頼むべきかを提案し ます。