足回りのきしみは、ドライバーが何か月も我慢してしまう音です。走りは 問題なく、打音もないのに、段差を越えるたびに何かがギシギシ、あるいは キューと鳴る。実際そのほとんどは無害な、乾いたゴムのきしみです。ただ きしみには深刻な出どころもあり、それを見落とさないことが大切です。 以下、きしみがどこから来るのか、リフトなしで発生源を探す方法、グリスで 済む場合と交換が必要な場合をまとめます。

きしみはどこから来るのか

きしみは衝撃ではなく摩擦の音で、そこが打音との決定的な違いです。打音は ガタを、きしみは二つの面が乾いて接していることを語ります。足回りで こすれるのは主に三つの組み合わせです。

  • ゴムと金属 — スタビライザーバーを抱くブッシュ、アームのブッシュ、 ショックアブソーバーのブッシュ。
  • 金属と金属 — ブーツが破れてグリスを失ったボールジョイントや タイロッドエンド、へたったスプリングとその座面。
  • ゴムとゴム — バンプストップやダストブーツ、まれにボディの ウェザーストリップが「足回りのように」鳴くこともあります。

よい知らせは、きしみはほぼ必ず走らなくても聞こえることです。止めた車を 揺するだけで出ます。特定の速度と特定の段差でしか再現しないことが多い 打音に比べて、はるかに場所を突き止めやすいわけです。だいたいは自宅の 駐車場で片がつきます。

主な発生源

発生源音の感じ出る場面対処
スタビライザーブッシュゆるい段差でギシギシ、キーキー雨や洗車のあと、寒い時期グリスまたは交換
アームのブッシュ縮み側でのきしみ寒い時期、古い車で多い摩耗していれば交換
ボールジョイント、タイロッドエンド操舵時と段差での乾いたきしみ常時、悪化していく早めに交換
アッパーマウント停車してハンドルを切るときのきしみ操舵時と段差点検、交換
座面に当たるスプリング揺すったときのギシッ、ザラッという音荷重がかかったとき折損がないか目視
ブーツ、バンプストップ縮み側でのゴムの鳴き大きめの段差安価にグリスか交換

いちばん多く見つかるのはスタビライザーブッシュです。ロールのたび、段差の たびにバーが回転する二つのゴムの塊ですね。グリスが抜け、ほこりが研磨材の ように働き、ゴムが歌いはじめます。症状の上で隣り合っているのがスタビリンク で、傷んだジョイントはふつう打音を出しますが、ジョイントが乾いた初期段階 ではきしむこともあります。症状は スタビリンク摩耗のサイン に、ブッシュ側は スタビライザーブッシュ摩耗のサイン にまとめてあります。

アームのブッシュのきしみは少し違い、もっと鈍く、たいていは縮み側で出ます。 変形したり切れたりしたゴムがスリーブの上で滑るからです。ひび割れ、裂け、 はみ出しは目で見て分かります。詳しくは サスペンションブッシュ摩耗のサイン にあります。

きしみと天気

きしみには特徴的な性質があります。天気に左右されるのです。これが点検の 前にかなりのことを教えてくれます。

  • 雨や洗車のあと — 水がゴムブッシュからグリスとほこりを落とした 状態です。このきしみは乾けば収まるのが普通です。
  • 寒い時期 — ゴムが硬くなり、滑ってきしみます。数キロ走って足回りが 温まると薄れていきます。
  • 暑い時期に消える — 柔らかいゴムは静かに滑ります。治ったわけでは なく、秋にはまた戻ります。

天気を無視して、どんな気温でも同じように鳴るきしみは、金属同士の摩擦を 疑う根拠になります。ボールジョイント、タイロッドエンド、スプリングです。 こちらのほうが重要で、早く突き止めるべき相手です。

発生源の探し方

  1. 四隅を順に揺する。 駐車状態で、各コーナーを上からしっかり押し 込みます。きしみが再現すればそのコーナーが発生源です。誰かにタイヤの 横やホイールハウスの下で聞いてもらいましょう。
  2. 停車したままハンドルを切る。 車を動かさず左右いっぱいまで切ります。 フェンダーの上のほうからきしむならアッパーマウント、下からならボール ジョイントかタイロッドエンドです。
  3. 試しにグリスを塗る。 スタビライザーブッシュへのシリコングリスは、 れっきとした診断手段です。きしみが消えれば発生源が確定します。
  4. ブーツを目視する。 ボールジョイントやタイロッドエンドのブーツが 破れていて、きしみもあるなら、それ以上の実験をせずに部品を交換する 根拠になります。 ボールジョイント摩耗のサイン を参照してください。

きしみと一緒に打音が出はじめたなら、打音から取りかかってください。ガタは 乾いたゴムより重要です。探し方の道筋は症状ページ 足回りの打音段差での打音 にあります。

グリスか交換か

一般則はこうです。乾きが原因で鳴くゴムはグリスで時間を稼げます。崩れ はじめているから鳴くゴムと、グリスが切れて鳴く金属は、交換しかありません。 安いブッシュをけちるのが正当化されることはめったにありません。二度目の 入庫のほうが部品代より高くつきます。

ブッシュ交換のときに念を押しておく価値があるのは二点です。ブラケットの ボルトを勘ではなく規定トルクで締めること、そして新しいブッシュの内径が バーの直径にきちんと合っていること。大きすぎるブッシュは、修理しても きしみが残る典型的な理由です。

無害なきしみなのか傷んだジョイントなのか音だけでは判断できないときは、 Stukアプリに録音してください。どんなときに音が出るかというあなたの回答と 録音を突き合わせ、考えられる原因を緊急度つきで示します。

工場へ行く前の短いチェックリスト

準備して行くには、五つの観察で足ります。どちら側が鳴るか(左右、前後)。 きしみが天気に左右されるか。止めた車のフェンダーを揺すると出るか。 下回りを洗ったあとで変わるか。そして最近の足回りの作業と時期が重なって いないか。この五つの答えは、リフトに三十分乗せるより早く容疑者を絞り 込みます。整備士も具体的な情報をありがたがるはずです。