クラッチペダルを踏んだ瞬間にスイッチが入り、足を離した瞬間に消えるうなり 音。これは音そのものが犯人の名前を言ってくれる、珍しいケースです。レリー ズベアリングの振る舞いがまさにそれです。人生の大半を何もせずに過ごし、ペ ダルが踏まれている間だけ働く部品。なぜそうなるのか、ほかの駆動系の音とど う見分けるのか、修理では何をするのかを見ていきます。

ペダルを踏むと中で何が起きているか

クラッチは、押さえつけられたディスクを介してエンジンとミッションをつない でいます。そのつながりを切るには、クラッチカバーのダイヤフラムスプリング を押さなければなりません。それがレリーズベアリングの仕事です。回転してい るダイヤフラムの爪に当たり、それを押します。ペダルを離している間、ベアリ ングは止まっていて回りません。ペダルを踏んだ瞬間、回転しているクラッチカ バーに押し当てられ、エンジン回転数で回り始めます。

音の性格はここから来ています。摩耗した軌道面は、荷重がかかって回っている ときにしか自己主張しません。つまり、ペダルを踏んでいるときに限られます。 エンジン回転とともに音程が上がり、ペダルを離した瞬間に消える、一定で単調 なうなりやサラサラ音。これがこの部品の名刺です。

1分でできる確認

確認は停車したまま、ニュートラルで、サイドブレーキをかけて行います。

  1. エンジンをかけ、水温が上がるまで待ちます。
  2. アイドリングのまま、クラッチをゆっくり床まで踏み、5〜7秒そのまま保持し ます。うなりが出ればベアリングが容疑者です。
  3. ペダルを離します。音は出たときと同じくらい急に消えるはずです。
  4. 1500〜2000回転でも繰り返します。レリーズベアリングのうなりは回転ととも に音程が変わります。

逆のパターン、つまりペダルを踏むと音が消える場合は、レリーズベアリングで はなくクラッチの奥にある部品を指しています。その切り分けは クラッチを踏むと音が止まる で扱っています。うなりに加えて発進時のジャダー、焦げくさいにおい、坂道で のパワー不足があるなら、一つの部品ではなくクラッチ一式を見るべきです。詳 しくは クラッチ摩耗のサイン をご覧ください。

そのタイミングでうなるほかのもの

発生源見分け方
レリーズベアリングペダルを踏んだときだけうなり、回転とともに変化
インプットシャフトのベアリングペダルを離したニュートラルでうなり、踏むと弱まる
レリーズベアリングのガイドスリーブうなりではなく、ペダルの動きに合わせたキシキシ音やカチッ
フォークやワイヤーのリンクペダルの動きに同期した乾いたキシキシ音。エンジンを切っても聞こえる
オルタネーター、ウォーターポンプ、アイドラーペダル操作にまったく反応しない

ここでの決め手はただ一つ、音がペダルに結びついているかどうかです。うなり が独自のペースで鳴っていてクラッチに反応しないなら、探す先は補機類のほう です。

修理の決め方

決定的な事実は、ミッションを降ろさなければならないということで、ほかのす べてはそこから決まります。結論が二つ出てきます。まず、クラッチは一部品で はなくキットで交換します。ディスク、カバー、レリーズベアリングは同じ年数 と同じ摩耗を抱えているので、別々にやれば同じ工賃を二度払うことになります。

次に、ミッションを降ろしたときしか手が届かないものは、すべて同じ話の中に 入れておくべきです。リヤのクランクシャフトオイルシール、ガイドスリーブ、 そしてどのみち抜くことになるミッションオイル。これらを見積もりに並べる工 場は、水増しをしているわけではありません。

もう一つ事前に聞いておく価値のある質問があります。あなたの車にデュアルマ スフライホイールが付いているか、その状態はどうかです。クラッチを外したと きに点検されますが、傷んでいるのにクラッチだけ替えれば、数か月で振動が戻 ってきます。詳しくは デュアルマスフライホイール不調のサイン にあります。ミッションを載せたあとでそれに気づくのが、いちばん高くつく順 路です。

緊急度で言えば、レリーズベアリングは即停車の部品ではありません。最初のう なりから本当の面倒までは、たいてい数か月あります。とはいえ無期限に先延ば しにしないでください。うなりはゴリゴリ音に変わり、ペダルの踏みしろが変化 し、崩れたベアリングがクラッチカバーの爪を傷めれば、普通の修理が高額な修 理に変わります。

うなりが小さくて、ペダルと結びついているか自信が持てないときは、Stukアプ リで音を録音してみてください。まずペダルを離したアイドリングで、次に踏ん だ状態で。アプリが二つの録音を比べ、いくつかの回答と照合して、考えられる 原因を確率つきで示します。