オルタネーターとウォーターポンプは、ファンベルト(補機ベルト)の上でお隣 同士です。しかも両方とも同じような鈍いうなり方をします。回転数に合わせて 大きくなる低い連続音で、走っていても停まっていてもほとんど変わりません。 診断を間違えたときの代償は方向によって違います。高くつくのは、ポンプの音 をオルタネーターだと思い込むほうです。焼き付いたポンプはタイミングベルト まで道連れにするからです。ここでは簡単なチェックで両者を切り分ける方法を 説明します。
なぜ同じ音に聞こえるのか
うなっているのは、どちらの部品でも同じもの、つまりシャフトを支えている ベアリングです。摩耗した軌道面は単調な低い音を出し、その周波数はプーリー 比を通じてクランク回転数に追従します。どちらもエンジンブロックに直接 ボルト留めされていて、振動が金属を伝わっていくので、耳だけで聞くと音が あちこちから同時に出ているように感じられます。
決定的な違いは、負荷のかかり方にあります。オルタネーターは電気的に負荷が かかります。電装品が電流を欲しがるほどシャフトにかかる磁気抵抗が増え、 ベアリングの仕事も重くなります。ウォーターポンプはクーラントを送るだけで、 電装品にはまったく反応しません。その代わりベアリングのすぐ隣にシールが あり、この二つはたいてい一緒に逝きます。だから湿った跡が残るのです。
切り分けのためのチェック
- 電気負荷をかける。 暖機後のアイドリングで、ハイビーム、リア デフォッガー、ブロアファンを全開にして音の変化を聞きます。うなり音が 大きくなって音程が下がったら、オルタネーターです。
- 漏れを探す。 エンジンが冷えている状態で、ポンプのハウジングとその 真下を点検します。筋状の跡、クーラントの結晶、湿った砂ぼこり。これが あれば他の症状がなくてもポンプでほぼ確定です。
- プーリーのガタ。 ベルトを外した状態で、各プーリーを手で軸に対して こじってみて、それから回してみます。ゴリゴリ感、目に見えるガタ、 引っかかりがあれば、その部品が犯人です。
- 打診棒を使う。 メカニック用の打診棒、あるいは長いドライバーの柄を ハウジングに当てる方法が、いちばん確実に音源を絞り込めます。工場でも ここから始めます。
ベルト本体とアイドラープーリーは別に切り分けておく価値があります。これら の音はうなりというより甲高いキュルキュル音です。似たケースは症状ページの ベルトの鳴きにまとめてあります。
並べて比べる
| サイン | オルタネーター | ウォーターポンプ |
|---|---|---|
| ライト・ヒーターへの反応 | うなり音が大きくなる | 無反応 |
| 液体の跡 | なし | クーラントの滴り、結晶 |
| 一緒に出る症状 | バッテリー警告灯、ライトが暗い | オーバーヒート、水温の乱高下 |
| 進行の仕方 | うなりが咆えるような音に変わる | うなりがゴリゴリ音に変わり、ガタが出る |
| 壊れたときのリスク | バッテリー上がり | ベルト脱落、オーバーヒート、エンジン損傷 |
リスクの行は二度読む価値があります。修理を待てるかどうかを決めるのは ここだからです。オルタネーターは警告灯で予告してくれて猶予をくれますが、 ポンプは前触れなしに壊れます。
修理方針はどう決まるか
決め手になるのは、あなたのエンジンでポンプを何が駆動しているかです。 タイミングベルト駆動で、しかも走行距離がベルト交換の指定時期に近いなら、 ポンプは当然のようにベルトと同時交換します。同じ場所を二度バラす工賃の ほうが部品代より高くつくからです。補機ベルト駆動なら、この作業は単独で 成立します。
オルタネーターにも似た分かれ道があるので、聞いてみてください。ベアリング だけ交換できるのか、それともユニット丸ごと売られようとしているのか。多く のオルタネーターではオーバーホールが十分に選択肢になりますし、 ワンウェイプーリー(デカプラプーリー)だけの交換も同様です。このプーリー はそれ自体が異音の常連で、オルタネーター本体よりずっと安く済みます。
どちらだったとしても、長く使った補機ベルトは外したついでに交換します。 すでに払っている工賃に比べれば、ごく小さな部品代です。
違いをいちばん簡単に捉えられるのは録音です。Stukアプリで短い音声を2本 録ってください。無負荷のアイドリングで1本、ライトとヒーターを入れて30秒 後にもう1本。アプリが2本の録音とあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因 をパーセンテージで表示します。「何かうなってるんですけど」ではなく、仮説 を持って工場に行けるようになります。