こういう相談が一つのジャンルを成しています。街中では文句のつけようが ない走りなのに、高速道路で八十を超えると低く均一なうなりが出てきて、 車内での会話が難しくなる。工場に持ち込むと、整備士は敷地内を一周して 肩をすくめる。よくある話で、しかも説明もつきます。街中では、その音が 聞こえるようになる条件がそろわないだけなのです。なぜそうなるのか、そして 毎回郊外まで出かけずに発生源を捕まえる方法を説明します。
なぜ速度がすべてを決めるのか
回転する部品のほとんどで、音の周波数は速度に比例します。直径65センチ ほどのタイヤは、時速60キロで毎秒およそ8回転、時速120キロなら16回転 します。ベアリングの軌道面の傷が低い周波数で出す、聞き取れるかどうかの にぶいざわめきは、周波数が倍になるとはっきりした唸りに変わります。
二つ目の要因は背景の音です。街中では、回転が変わり続けるエンジン音、 ミッション、外の音が場を支配しています。高速道路ではエンジンは一定で 静か、速度も一定。聴覚は、一つの連続した音を拾い出すのに理想的な条件を 手に入れます。だから「高速で出るうなり」は、実は街中にもあった不具合で、 ただ誰にも聞こえていなかった、という結末になりがちです。
音源は三つのグループに分かれる
| 音源 | ふるまい | 確認方法 |
|---|---|---|
| ハブベアリング | 時速60キロあたりからなめらかに増える | ゆるやかに左右へ車線変更 |
| タイヤ、のこぎり状の偏摩耗 | 均一なうなり、路面で変わる | トレッドを手でなでる |
| ミッション、デフ | 速度だけでなく駆動状態に連動 | 駆動時と惰行時を比べる |
| 空力、ドアの隙間 | 特定の速度で急に出る | 継ぎ目をテープでふさいで走る |
| アンダーカバー、インナーフェンダー | 狭い速度帯、ビビリを伴う | 下をのぞく、手で揺すってみる |
確認は一回のドライブに収まります。まず惰行テスト。うなりが出る速度まで 加速し、ニュートラルにします。うなりがそのまま残るなら、音源はタイヤと 一緒に回っています。変わるならミッション側を見ます。次に車線変更テスト。 ゆるやかに左へ、続いて右へ寄せます。音量が変われば手がかりはハブ ベアリングで、荷重が移った側で大きくなります。最後に路面テスト。 なめらかな舗装と粗い舗装の両方を走ります。タイヤは声色を変えますが、 ベアリングは変えません。ベアリングの確かめ方は ジャッキアップしてハブベアリングのガタを見る と ハブベアリングがうなったまま走れるか に詳しくあります。
ベアリングではない場合
足まわりを除外できる分かりやすいサインがあります。うなりが狭い速度帯で 急に出て、急に消えること。このふるまいは共振の典型です。浮いてきたドアの ウェザーストリップ、緩んだエンジンアンダーカバー、たるんだインナー フェンダー、ルーフレールなどが固有の周波数で震えてうなり、速度がその帯域 を外れた瞬間に黙ります。確認は簡単で、怪しい継ぎ目をマスキングテープで ふさいで同じ区間を走るだけです。車体下からのビビリ音は 段差で車の下がガタガタ鳴る や ビビる遮熱板を見つける も参考になります。
もう一つの筋書きは、うなりそのものではなく、その隣に何が付いているかです。 タイヤの回転に同期した単発のカチカチ音が加わっているなら、それは別の症状 です (走行中に一輪から出るカチカチ音)。 ブレーキを踏んだときにハンドルが震えるなら ブレーキ時のジャダー を見てください。速度に関係する音の一覧は症状ページ 走行中のうなり音 にまとめてあります。
工場でどう伝えるか
実践的なコツは、うなりを言葉で描写しようとせず、条件を並べることです。 「時速80キロから出て、120キロまで大きくなる。ニュートラルにしても消え ない。ゆるやかに左へ寄せると大きくなる」。これだけで整備士はどこを見るか 判断できます。敷地を一周する時間も要りません。
ハブベアリングと確定した場合、修理について知っておきたいことが二つ。 その車がハブに圧入する単体ベアリングなのか、ハブごとのアッセンブリー なのかで、金額も作業時間も変わります。そしてここではハブナットの締付 トルクが、ほかの多くの作業以上に重要です。締めすぎでも緩すぎでも新品 ベアリングは数千キロで壊れます。インパクトレンチではなくトルクレンチを 使ってもらってください。
この種のうなりの最大の厄介さは、整備士に実演できないことです。高速道路 の上にしか存在しないのですから。うなりが出る速度で、そして車線変更の 最中にStukアプリで録音してください。アプリが録音と回答を突き合わせて 考えられる原因を確率つきで示しますし、録音そのものを整備士に聞かせる こともできます。