加速すると響く金属音。缶の中で小銭を振っているような、あるいは誰かが 細いハンマーでエンジンを叩いているような音です。「カリカリ音」 「上り坂でカラカラ」「負荷をかけるとガラガラ」など、呼び方はさまざま ですが、多くの場合その裏にあるのはひとつの現象、ノッキングです。 エンジンが止まるわけでも路上で立ち往生するわけでもないので、何か月も 我慢してしまう人がいます。それはやめたほうがいい。ダメージは静かに 積み上がり、請求書は大きくなって届きます。この音がどこから来るのか、 ノッキングでない場合は何なのか、まず何を確認すべきかを見ていきます。
ノッキングとは何で、なぜ金属音になるのか
健全なエンジンでは、ガソリンと空気の混合気がスパークプラグで着火され、 速いけれども滑らかな火炎面として燃え広がります。ノッキングでは、 混合気の一部が圧力と熱で自己着火します。つまり微小な爆発です。その 衝撃波がシリンダー壁とピストン頂面を叩き、その打撃が金属的な響きとして 耳に届きます。
現代のターボ直噴エンジンには、とくに厄介な変種があります。低回転 早期着火です。高いギアで低回転から加速したときに、まれに、しかし 大きな単発の「バン」という音が出ます。この種のエンジンでは、メーカーの 承認規格に正確に合ったオイルを使うことが決定的に重要です。
ノッキングの条件は加速時にピークを迎えます。アクセル全開、シリンダー 内圧は高く、回転数はまだ上がっていない。だから典型的な絵はこうなります。 低回転からの加速、上り坂、満載、エアコン作動時に鳴り、一定速の巡航では 消える。なお、この音を「ピストンが叩いている」と呼ぶのは誤りです。 本物のピストンピンの打音は別の、はるかにまれな故障です。詳しくは ピストンピンの打音を見分ける を参照してください。
原因: 燃料からセンサーまで
| 原因 | 仕組み | 対処 |
|---|---|---|
| オクタン価不足の燃料 | 燃料が早すぎるタイミングで自己着火する | 取扱説明書指定の銘柄を入れる |
| 燃焼室のカーボン堆積 | 実圧縮比が上がり、堆積物が赤熱する | カーボン除去 |
| 熱価の合わないプラグ | 過熱したプラグが自分で混合気に着火する | 適合するプラグのセット |
| ノックセンサー | ECUが点火時期を遅らせられていない | 診断、センサー交換 |
| エンジンのオーバーヒート | 熱い壁面が自己着火を誘発する | 冷却系の点検 |
| 薄い混合気 | 薄い混合気は高温で燃える | 二次エア吸いを探す、インジェクター洗浄 |
まず思い出すべきは燃料です。給油所ごとの品質差は現実に存在しますし、 ある特定の店で入れた直後から鳴り始めたなら、それ自体が診断です。 次に多いのは、指定より低いオクタン価で何年も走ってきたエンジンです。 燃焼室のカーボンが少しずつ実圧縮比を押し上げ、やがて正しい燃料でも ノッキングが出るようになります。
LPG改造車は別に触れておく価値があります。きちんとセッティングされた ガスはノッキングを誘発しませんが、点火時期の設定ミスやガスの混合気が 薄いと、負荷時にまったく同じ音が出ます。LPG装着や再セッティングの あとから鳴り始めたなら、カーボン除去ではなくシステムの調整から 始めてください。
ノッキングではない場合
似た音は他からも出ます。排気系の遮熱板は特定の回転数で鳴りますが、 負荷なしでも、停車したままの空吹かしでも鳴るのが違いです。探し方は 鳴っている遮熱板を見つける に。摩耗したピストンピンは負荷の変わり目、つまりアクセルオフと 踏み直しで響き、加速時だけではありません。タイミングチェーンは アイドリングでもシャラシャラ鳴ります。聞き分け方は 音でタイミングチェーンの張りを確認する にあります。カラカラ音に失火が加わっている場合、つまりエンジンが 震えて力が落ちているなら、話は点火系の方へ移ります。この組み合わせは エンジンが失火して打音がする で扱っています。
もうひとつのそっくりさんは、加速でエンジンが傾いたときにアンダーカバーや トルクロッドが車体に触れる音です。金属的ですが下から来るのが特徴で、 リフトに載せれば数分で原因が見つかります。
決定的なテストはこれです。ノッキングは負荷と厳密に結びついています。 上り坂で加速すれば鳴り、同じ加速を下り坂でやれば静かになるか消える。 機械的なガタつき音は負荷への依存がはるかに小さい。自分の音を典型例と 比べるなら症状ページ 加速時のカリカリ音 と 加速時の打音 を見てください。
危険度と、走り続けてよいか
粗悪燃料による短期間のノッキングなら、エンジンは持ちこたえます。 ノックセンサーが検知し、ECUが点火時期を遅らせ、パワーの一部と 引き換えに音は消えます。危険なのは継続的なノッキングです。衝撃波が ピストンリング間のランドを割り、ベアリングを傷め、バルブを過熱 させます。外から見れば普通に走っている。圧縮が落ちてマフラーから 青い煙が出るその日までは。
もうひとつの目印は燃費です。危険域を避けて点火時期を遅らせ続けるECUは 経済性を犠牲にするので、ノッキングしているエンジンは普段より1リットル から1.5リットルほど余計に食い始めます。
だからルールは単純です。ノッキングしたまま給油所や工場まで走るのは かまわない。何週間もそのまま乗るのはだめ。この線引きは エンジンに打音がある状態で走れるか にも書いてあります。
確認する順番
安いほうから高いほうへ進めます。第一に、信頼できる給油所で指定 オクタン価の燃料を満タンにし、一、二タンク様子を見る。第二に、 スパークプラグを外して見る。白っぽい堆積や溶けた電極は過熱と薄い 混合気を示します。外したついでに熱価がカタログの指定と合っているかも 確認してください。第三に、診断機のスキャンでノックセンサーの異常と、 ECUが実際に使っている点火時期がわかります。
内視鏡でカーボンが確認されたなら、除去にかかる費用は放置した場合の 結果とは比べものになりません。ただし、より大きな作業に同意する前に もうひとつ聞いてください。そもそも何が堆積の原因だったのか。短距離 走行の繰り返し、長すぎるオイル交換間隔、漏れているインジェクター。 どれも一年で同じカーボンを作り直します。原因を治さない清掃は、 同じ金を二度払うことになります。
ノッキングなのか機械的な音なのか判断がつかないときは、加速中の音を Stukアプリで録音してください。音がどんなときに出るかというあなたの 回答と突き合わせ、考えられる原因を確率と緊急度つきで示します。工場に 行く前の出発点として便利です。