エキゾーストマニホールドは各シリンダーからの排気を集め、ガスケットを 挟んでシリンダーヘッドとつながっています。このガスケットの置かれた 条件は過酷です。数百度の温度変化、振動、膨張と収縮の繰り返し。抜けて しまうと合わせ面にすき間ができ、排気ガスがそのままエンジンルームへ 出てきます。音がとても分かりやすいので、何を聞けばいいか知ってさえ いれば、最初の一分で見当がつくことも珍しくありません。
どんな音がするのか
典型的なのは、ボンネットの下から聞こえる速く乾いたカチカチ音、 あるいはカタカタ音です。エンジン回転に同期していて、冷間始動から 数分がいちばん大きくなります。「バルブが鳴り出した」と表現する方が 多いのですが、実際よく似ていて、それが誤診の主な原因になっています。
エキマニだと分かる手がかりはこうです。
- 暖まると急に小さくなる。 金属が膨張してすき間がほぼ閉じ、音が 弱まるか消えます。
- 負荷で大きくなる。 アクセルをあおるとカチカチがはっきりして、 シューという音が加わります。
- 出どころ。 音はヘッドカバーからではなく排気側から出ます。上から より、外に立ってホイールアーチのあたりで聞くほうがよく分かります。
- 付随する症状。 エンジンルームの、ときには室内の排気臭。合わせ面 のあたりに手をかざすと分かる熱い空気の流れ。
アイドリング回転に結びついた異音の全体像は、症状ページの エンジンのカチカチ音にまとめてあります。
点検で見ているもの
冷えたエンジンなら、ほとんど工具なしで裏づけが取れます。
- 黒いススの付着。 エキマニとヘッドの合わせ面のまわりや遮熱板の 上。目で見て分かるいちばん確かな兆候です。
- 扇形に広がったスス。 どれか一つのポートから広がっていれば、 どの通路が漏れているかが分かります。
- スタッドとナットの状態。 折れたり緩んだりしたスタッドは、 ガスケット抜けとほぼ必ずセットで出てきます。
- エンジンをかけた状態での確認。 手袋をした手を合わせ面に近づけ ると、脈打つ熱いガスの噴流を感じます。
- 燃料補正の数値。 排気側から吸い込まれた空気がO2センサーの信号を 歪め、混合気が濃くなることがあります。
何と間違えやすいか
| 出どころ | 音の性格 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| エキマニのガスケット | シューを伴うカチカチ音 | 冷間時に大きい、合わせ面にスス |
| ラッシュアジャスター | 上のほうからのカチカチ音 | ヘッドカバーの下から、ススは出ない |
| 遮熱板 | カラカラ、ビリビリ | 段差や振動に反応する |
| エキマニのひび割れ | 同じカチカチ音 | 割れが目視でき、暖まっても消えない |
| 触媒 | ガラガラ、力が出なくなる | 音は床下のケースから出る |
最後の行はよくある「ご近所さん」です。排気系の不具合は二つ同時に来る ことが少なくありません。触媒からの流れるようなザラザラ音や、エンジン そのものから出るリズミカルな破裂音は、それぞれ別の症状として切り分ける 必要があります。
修理はどう決めるか
早いうちに手をつければ、作業そのものは比較的軽く済みます。いちばんの 難所は固着したスタッドや折れたスタッドです。もみ抜いてネジ山を直す 作業は、ガスケットそのものよりずっと手間がかかることがあります。だから 作業前に聞いておきたいのはここです。スタッドが折れたらどうするのか、 そのままネジ山を修正できるのか、それともヘッドを降ろすことになるのか。
ほかに二点。エキマニの合わせ面の平面度を確認してもらえるかどうか。 歪んだままのエキマニは、新品のガスケットを数か月で焼き抜きます。この 工程を飛ばす工場は、同じ作業を二回売っていることになります。もう一つは、 ナットを正しい順序で規定トルクで締めてもらうこと。エキマニの締結は 中央から外側へ段階的に行うもので、均一に締まっていないガスケットは 最初の冷間始動から漏れます。
見えにくい副作用もあります。排気の一部がO2センサーより手前で抜けて しまい、バルブオーバーラップのあいだに外気がシステムに吸い込まれます。 センサーは余分な酸素を見て、ECUは混合気が薄いと判断して燃料を増やす。 燃費が悪くなり、触媒も設計の想定外の条件で働くことになります。冷間時の カチカチ音と同時に燃費が1〜2リットルぶん悪くなったなら、それは偶然 ではなく同じ原因です。
先送りしてはいけない理由が二つあります。真っ赤に焼けたガスの噴流は、 まわりのホース、配線、樹脂カバーに対してバーナーのように働きます。 そしてすき間が広がるあいだにスタッドはさらに焼け、単純なガスケット 交換がもみ抜き作業の長編になっていきます。
冷えているときだけカチカチ音が出て、バルブの音でないと言い切れない ときは、冷間始動からの最初の30秒をStukアプリで録音し、暖まったあとに 同じ場面をもう一度録ってみてください。アプリが二つを比べて、考えられる 原因を確率つきで表示します。この不具合は、冷間と温間の差でとくによく 判別できます。