ゴリゴリという音と、キーッという鳴きは別物です。ガラスを引っかいた傷と、 チョークのきしみくらい性格が違います。低くて、粗くて、はっきり金属の音。 窓を閉めていても聞こえて、ペダルを踏み込むほど大きくなります。 朝いちばんの鳴きと違って、これはまず無害ではありません。ほぼ必ず、 摩擦材が使い切られて金属がローターに当たっているという意味です。 パッドの鉄板か、専用の摩耗インジケーターのどちらかです。ですから問題は 「直すかどうか」ではなく、「工場までどれだけ時間の余裕があるか」になります。

ゴリゴリ音の正体は三つだけ

音の大きさと、鳴りっぱなしかどうかで区別できます。

ひとつ目は金属の摩耗インジケーター。摩擦材が最小厚さまで減ると ローターに当たり始めるように、パッドに付けられた薄い爪です。音は断続的で 高く、アクセルを戻して転がしているだけでも聞こえることが多い。組み込みの 警告装置で、ブレーキ自体はまだ効きますが、残りはほとんどありません。 どんな音かは パッド摩耗インジケーターの音 に詳しく書いてあります。

ふたつ目は摩擦材が尽きたパッド。鉄板が直接ローターをこすっています。 音は大きく、鳴りっぱなしで、ペダルを踏むほど強くなり、ローターには 深い円周状の溝が刻まれます。この状態で一回止まるたびに、ローターの厚みが 削られていきます。

三つ目は異物。ローターとダストカバーのあいだに石や破片が挟まると 似たゴリゴリ音になりますが、ペダルとは連動せず、勝手に消えることも多い。 摩耗と見分けるのは簡単で、異物ならペダルを踏んでも離しても音は同じです。

どこまで走ってよいか

状況どうするか
断続的なゴリゴリ、制動力は十分数日以内で工場を予約
停止のたびに鳴りっぱなし工場まで直行、長距離は避ける
ゴリゴリ音+制動距離が伸びた工場までだけ、車間を取っておとなしく
ゴリゴリ音+ペダルが柔らかい、沈む走らずレッカーを呼ぶ
ゴリゴリ音+制動時に片側へ引っ張られる走らずレッカーを呼ぶ
ゴリゴリ音+焦げた匂い、ローターが高温停めて冷ます、レッカーを呼ぶ

目安としては、急制動をしない市街地走行で数十キロというところです。 ただし表の下半分にひとつでも当てはまれば、この猶予は消えます。 油圧を保てなくなったブレーキ、左右で効きが揃わないブレーキは、 工場までの距離に関係なく危険です。

負荷の話は別に書いておきます。減ったパッドは熱を逃がす力が落ちています。 長い下り坂や、人と荷物を積んだ状態は、我慢できる状況を数分で緊急事態に 変えます。摩耗の段階ごとの音の変化は症状ページ ブレーキを踏むとゴリゴリ鳴る にまとめてあります。

ゴリゴリ音と間違えやすいもの

別の音をゴリゴリ音だと思い込むと、パッドを新品にしても何も解決しません。 速度とともに大きくなり、ペダルには反応しない一定の唸りは、ハブベアリングか タイヤです。ハブベアリングの唸りをどこまで我慢できるかは 唸るハブベアリングのまま走れるか にまとめました。タイヤを交換した直後に出てきた音は、ほぼトレッドパターンで 説明がつきます。

見分けるのは一つの操作で済みます。加速してからアクセルを戻し、ブレーキに 触れずに転がす。音が変わらなければブレーキではありません。消えて、 ペダルを踏むと戻ってくるならブレーキです。

作業範囲の決め方

最初の質問は、ローターがどこまで許容されるかです。ローターには最小厚さが 刻印されていて、鉄板が刻んだ溝はしばしばその数字を超えて削っています。 ノギスで測って数字を教えてくれる工場は、この質問に答えています。 「削ってみて様子を見ましょう」は答えになっていません。研磨に意味があるのは、 削ったあとも限界内に収まる場合だけです。そうでなければ、どのみち一か月で 交換になる部品にお金を払うことになります。

ふたつ目は、なぜ偏摩耗したのか。片減りはパッドの問題ではなく ブレーキキャリパーの問題です。固着したスライドピンや動かなくなったピストンは、 古いパッドを終わらせたのとまったく同じように新品パッドを終わらせます。 スライドピンの整備、つまり清掃とブーツ交換と適正なグリスアップは、 パッド交換と同時なら安く、あとから単独で持ち込むと高くつきます。

計算は単純です。パッド一式はローター一対よりはっきり安く、ゴリゴリ音を 出したまま走った一週間ごとに、予算は前者から後者へ移っていきます。 金曜日に鳴り始めたなら、一か月引っ張るより土曜日を工場で使うほうが 安上がりです。

音は出ているけれど、摩耗インジケーターなのか鉄板なのか判断がつかないとき。 録音が助けになります。Stukアプリが周波数を解析し、音がいつ出るかという いくつかの質問への回答と突き合わせて、考えられる原因を確率つきで示します。 点検を受けるまでそもそも運転してよい状態なのか、という判断も含めて出ます。