アイドリング中のうなりが厄介なのは、速度にも操作にも結びついていないから です。車は止まっているのに音がする。ただしアイドリングには別のてこが あります。問い詰めるのが簡単なのです。電装品を入れたり切ったり、 ボンネットを開けて聞いたり、回転を変えたり。順番を守って進めるかぎり、 停まっている車で音源を探すのは、見た目ほど難しくありません。
まずうなりと振動を分ける
第一段階は、自分が実際に何を聞いているのかをはっきりさせることです。 ハンドル、シート、車体に伝わってくる低い震えは、たいてい部品の音では なく、傷んだマウントを通して車体に伝わったエンジンの振動です。これには これで別の原因の一覧があり、症状ページ アイドリング時の振動 にまとめてあります。
狭い意味でのうなりは音です。均一で、中くらいか低い高さで、エンジン ルームから来ます。その音源は、ほぼ必ず回っている何かです。フェンダーに 手を置いてみてください。振動はないのに音はする、という状態なら、 相手は音です。
回転数もその場で見ておく価値があります。多くの車で正常なアイドリングは 毎分650〜850回転です。タコメーターが明らかに高い位置にあって、単に回転が 高いからうなっているのなら、原因はベアリングではなくエンジン制御側です。 冷えているだけのことも、エア吸いのこともあります。うなりを調べるのは、 アイドリングが正常な回転に落ち着いてからにしてください。
冷却ファン:いちばん多い答え
停まっているとラジエーターに風が通らないので、冷却ファンは頻繁に、長く 回ります。暑い日やエアコンを入れているときは特にそうです。波のように やってきて、数分ごとに勝手に出たり消えたりするうなりは、ほぼ確実に これです。
音が異常になる要因は二つ。電動ファンのベアリングが摩耗すると、いつもより 大きくうなり、唸りはじめます。縦置きエンジンの一部の車では、エンジンが 熱くなるとファンをつなぐカップリングを使っていて、これが壊れるとファンが 常時全開で回り、冷えているときからエンジンが吠えます。確認は簡単で、 ファンが止まるのを待つだけ。うなりが一緒に消えたなら、音源が見つかった ということです。
そもそもなぜファンがそこまで回るのか、というのは別の問題です。綿ぼこりと 埃で目詰まりしたラジエーター、死んだサーモスタット、冷却系のエア噛みが あると、ファンはほとんど休みなく回ります。この場合のうなりはファンの不具合 ではなく、オーバーヒートの症状です。まず見るのはラジエーターと冷却水の 量になります。
ベルトと補機類
うなりが常時出ていて、ファンの周期に従わないなら、次はファンベルトが 回しているものへ移ります。都合がいいのは、その多くがスイッチで問い詰め られることです。
- エアコンコンプレッサー。エアコンを入れたり切ったりします。うなりが ボタンに従うなら候補が決まりです。クラッチの音の出方は エアコンコンプレッサーのクラッチが傷んだときの音 にあります。
- オルタネーター。ハイビームとデフォッガーを入れます。摩耗した ベアリングは、負荷が増えるとよりはっきりうなります。
- パワステポンプ。停車したままハンドルを回します。音が育つなら、 液量とポンプを確認してください。
- アイドラー、テンショナー、ウォーターポンプ。これらはスイッチを 無視します。聴診器で聞くか、ベルトを外して短時間回して切り分けます。
スイッチで何も出なければ、残る道具はベルトそのものです。工場でベルトを 一時的に外し、三十秒ほどエンジンを回します。静かになれば音は補機側に あったということで、そこから一つずつ聞いていきます。聴診器の作り方と 当て方は 自作の整備用聴診器 にあります。ベアリングのうなりは、時間が経つとキーキー音や唸りに変わり ます。オルタネーターとウォーターポンプの切り分けは うなりはオルタネーターかウォーターポンプか にまとめてあります。
タイミング系とエンジン本体
頻度は下がりますが、アイドリング時のうなりがヘッドカバーの下、つまり タイミング系から来ていることもあります。伸びたタイミングチェーンは低回転 で、うなりと金属的なザラつきの境目のような音を出します。確かめ方は 音でタイミングチェーンの張りを見る にあります。タイミングベルトのエンジンでは、そのアイドラーがうなることも あります。樹脂のカバーが音を抑えるので、小さく聞こえます。
まとめの表
| 確認 | うなりの反応 | 考えられる音源 |
|---|---|---|
| 2〜3分待つ | 波のように出たり消えたり | 冷却ファン |
| エアコンのボタン | スイッチに従う | エアコンコンプレッサー |
| ハイビーム+デフォッガー | 大きくなる | オルタネーターのベアリング |
| 停車したままハンドルを回す | 変わる | パワステポンプ |
| 何にも反応しない | 常時一定 | アイドラー、ウォーターポンプ、タイミングチェーン |
緊急度はこの順で考えてください。ファンとコンプレッサーのうなりは予約した 日まで待てます。オルタネーターとアイドラーのうなりは数週間の話。そして 冷却水の跡をともなうウォーターポンプのうなりは先送りできません。この部品 は冷却系に属していて、長距離の途中で壊れればエンジンのオーバーヒートを 意味するからです。判断の材料は うなるウォーターポンプのまま走れるか にあります。
修理について実務的な注意を一つ。アイドラーやテンショナーを交換するときは、 ベルトも一緒に替えます。すでに払っている工賃に対して部品代はわずかです し、伸びた古いベルトで回す新品のアイドラーは長持ちしません。ベルト鳴きの 原因の一覧は ファンベルトのキーキー音の原因 にあります。
アイドリング中のうなりは録音しやすい音です。車は止まっていて、背景の音も 最小限だからです。ボンネットを開けたままStukアプリで録音してください。 アプリが音と回答を突き合わせて、考えられる原因を緊急度つきで示します。