耳で診断するときの難しさの半分は、音が聞こえないことではなく、どこ から来ているのかを突き止められないことにあります。ボンネットの下では 音の出どころが20センチ間隔で並んでいて、耳にはそれが混ざって届き ます。整備用の聴診器は、この問題を文字どおり解決します。ひとつの部品 のケースの振動をそのまま耳へ運び、それ以外を切り捨てるからです。 ガレージにあるもので数分あれば作れます。

使える三つの型

軸の長いドライバー。 いちばん手早い選択肢です。先端を部品の ケースに当て、柄の端を耳、あるいはそのそばの頬骨に押し当てます。軸が 長く太いほどよく伝えます。樹脂の柄は思ったほど音を殺しませんし、木の 柄ならさらに具合がいいです。

ホース。 内径8〜12mm、長さ60〜80cmのゴムかシリコンのホース。 片端を耳に入れ、もう片端を部品の近くに、押し当てずに構えます。この型 は空気を伝わる音をとらえるので、エア漏れ、ヒュー音、シューという音を 探すのに向きます。

先端付きのパイプ。 金属パイプ、あるいは長いボルトにホースの切れ端 をテープで留めたもの。前の二つの合わせ技で、硬い先端がケースの振動を 拾い、柔らかい部分が損失なく耳まで運びます。

いちばん得意な音
ドライバー部品のケースの中の打音やザラつき
ホースヒュー音、シュー音、エア漏れ
ホース付きパイプ補機のベアリング、ウォーターポンプ、オルタネーター
ダイヤフラム付きの市販品同じ、ただしより正確で雑音が少ない

どこに当てるか

エンジンルームを回る順番には意味があります。手当たり次第ではなく、 部品ごとに聴いてください。

  1. オルタネーター — ベアリングのあるリアカバー寄りのケースに。 回転を上げると大きくなるうなりや高い音は、ベアリングが終わりかけて いる典型です。
  2. アイドラーとベルトテンショナー — ブラケットかアイドラーの軸に。 ザラつきやゴロゴロ音もここに住んでいます。
  3. ウォーターポンプ — ポンプのハウジングに。うなりと高い音、 クーラントのにじみを伴うことが多いです。
  4. エアコンのコンプレッサー — エアコンを入れた状態と切った状態の 両方で当てて、差をとらえます。
  5. ヘッドカバー — 動弁系のカチカチ音。
  6. ブロック端のタイミングカバー — チェーンのザラつき。

ベルトを外して音が消えるなら、出どころはエンジン本体ではなく補機 です。二大容疑者の見分け方は ボンネットの下の高い音:オルタネーターかウォーターポンプかに、 音の全体像は症状ページ ベルトの鳴きにあります。

安全のルール

回っているエンジンは、思っているよりミスを許してくれません。最低限の 決まりごとです。

  • パーキングブレーキをかけ、ニュートラルかパーキングに入れ、輪止めを かう。
  • 袖のボタンを留め、ひもや紐類はしまい、髪はまとめ、腕時計と ブレスレットは外す。
  • 工具は横から差し入れる。ベルトやファンの上を越えない。
  • エキゾーストマニホールドやホースは高温です。一瞬でも触らないこと。
  • 5〜10秒ずつ短く聴き、そのあいだに一歩下がる。

電動ファンは、切ったあとの熱いエンジンでも、予告なく勝手に回り始め ます。その進路に手を置くことは、どんな状況でも避けてください。

音量についてもひとこと。工具をケースに押し当てると音は何倍にもなり、 回っているエンジンのそばではそれが耳への実際の負担になります。柄に いきなり全力で耳を当てるのではなく、軽く触れるところから始めて、 少しずつ押し当てを強くしてください。

聴診器が無力な場所

この道具は止まっている車で働くので、走っているときだけ鳴るものには 手が届きません。ハブベアリング、ショックアブソーバー、アームの ブッシュ、ブレーキ。これらは別の手段で確かめます。揺する、バールを かける、段差を走る、リフトに上げる。たとえば固着したブレーキ キャリパーは、アイドリング時の音ではなく、熱を持ったローターと車の 片流れで自分を明かします。ブレーキ側の切り分けは ブレーキ時の打音:パッドかキャリパーかに あります。負荷をかけたときにさまよう鈍い打音は、エンジンマウントから 出ていることのほうが多く、確かめ方は 負荷をかけてエンジンマウントを確かめるの 手順どおりです。

ダイヤフラム付きの市販の聴診器は手に入れやすく、自作より澄んだ音で 聴けます。それでも自作の型は、いちばん大事な問い、つまり「この部品か 隣か」には答えてくれます。そして記憶だけに頼らずに済むよう、聴きながら Stukアプリで録音を回しておいてください。アプリは音と、条件や場所に ついてのあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因を確率つきで示します。