エンジンマウントは、パワートレインを車体に吊っているゴムと金属の 複合部品、または液体封入式の部品です。役割は、エンジンを定位置に保ち、 発進・制動・変速のときの動きを吸収すること。ゴムが劣化して裂けると、 エンジンは動く自由を手に入れます。アイドリング振動、発進時の鈍いゴツン、 変速時のショック。マウントは、正しく負荷をかけさえすれば、リフトなしで 点検できます。

負荷をかける点検の手順

助手と平らな場所が必要です。考え方は単純で、ブレーキで車を止めたまま トランスミッションを通してエンジンに荷重をかけ、どれだけ動くかを見ます。

  1. エンジンを止め、ボンネットを開け、パーキングブレーキをかけ、 タイヤに輪止めをします。
  2. エンジンをかけて、通常の水温まで暖機します。
  3. 助手が運転席に座り、ブレーキを最後まで踏み込んで保持します。
  4. オートマなら、Dに入れて2〜3秒だけ軽くアクセルを踏み、Nに戻し、 次にRで同じ短い加圧をします。マニュアルなら、1速に入れて エンストしない範囲でクラッチをつなぎ始める位置まで上げ、 そのあとリバースで同じことを繰り返します。
  5. 自分はフェンダーの横に立って、エンジン上部を見ます。

見るのは動きの量と性格です。健全なマウントなら5〜15mmほど滑らかに傾いて、 柔らかく戻ります。減っていれば、当たりを伴う鋭い跳ね方をして、 金属同士の打音が出て、アクセルを戻したあとも揺れが残ります。 動く向きで、どちら側のマウントかが分かります。Dで荷重がかかるマウントと、 Rでかかるマウントは反対側です。

負荷をかけずに見えること

情報の半分は、ふつうの目視点検から得られます。

見えるもの意味
マウントのゴムの亀裂、裂け機械的な摩耗、交換
油状の液がにじんでいる液体封入マウントの機能喪失
エンジンが下がり、ベルトが張りすぎている下側または後ろ側のマウントが潰れている
車体に金属が当たった跡エンジンが可動範囲の限界まで届いている
アイドリングで振動、走り出すと収まる減ったマウントの典型像

液体封入マウントは、外から見て無事でも機能していないことがあります。 中の液が抜けて、空のゴムの塊になっているのです。この種類は目視ではなく、 負荷をかけて判定します。

他の打音と混同しないために

発進時のゴツンは、マウント以外からも出ます。ドライブシャフトのガタ、 壊れたアームのブッシュ、ミッションマウント、後輪駆動車ならプロペラシャフトの ジョイントからも似た音が来ます。

見分けるのは走行状態です。マウントの打音は荷重の変化に結びついています。 発進、変速、急にアクセルを戻したとき。ドライブシャフトの打音は駆動をかけた コーナーで出て、速いゴリゴリ音になります。サスペンションの打音は駆動ではなく 路面に従います。振動側の話は症状ページ アイドリング時の振動にあります。 変速のたびのショックがミッション側かどうかは オートマの変速ショックとゴツン音 と読み比べてください。

もうひとつよくある取り違えは、ホイールと一緒に回っているものが出す唸りを エンジンのせいにしてしまうことです。速度に連動する唸りの正体については 唸るハブベアリングのまま走れるか が参考になります。

修理の決め方

工賃はアクセス性で大きく変わります。多くの車で右上のマウントは三十分仕事 ですが、下の後ろ側となるとパワートレインを支えてアンダーカバーを外す作業に なります。ですから見積もりは「マウント一式」ではなく、どのマウントかを 指定して出してもらうべきです。

その会話に入れておきたいことが二つ。液体封入マウントは、安い無垢ゴムでは なく液体封入のもので交換するのが原則です。種類を間違えると、どんな調整でも 消せない振動が室内に出ます。それから、他のものを外さないとマウントに 届かない車では、何を一緒に外すのかを聞いてください。アンダーカバーか、 バッテリートレイか。その答えが値段と時間の両方を説明してくれます。

壊れたマウントで立ち往生することはありませんが、隣の部品を少しずつ 壊していきます。動きすぎるエンジンは、ホース、配線、ドライブシャフトに 負担をかけます。ゴツンが出てから一、二か月以内に手を打つのが妥当な線です。

本当に金属的な当たりなのか、単に発進が荒かっただけなのか判断がつかない ときは、発進の瞬間をStukアプリで録ってください。録音と、走行状態についての 回答を突き合わせて、考えられる原因を確率つきで示します。