2.4リッターの4B12は三菱のクロスオーバーやセダンに搭載され、バルブ クリアランスを自動で調整する方式のエンジンです。この自動調整は エンジンオイルで動いているので、オイルが要求を満たさなくなった とたんに機構が声を上げ始めます。オーナーの耳には、エンジン上部からの カチカチ音、あるいは速いタッピング音として届きます。この音がどこから 来るのか、他の音とどう見分けるのか、工場では何をするのかを見ていきます。
ラッシュアジャスターの仕組みと、鳴る理由
ラッシュアジャスターは、カムシャフトのカム山とバルブのあいだの クリアランスを油圧で詰める小さなシリンダーです。中にオイルがあって 圧力が正常なら、クリアランスはゼロになり、機構は無音で動きます。 オイルが間に合わない、あるいは一晩でアジャスターから抜けてしまうと、 すきまができる。そこにカム山が当たります。結果が、アイドリングでも 聞こえるエンジン上部からの速く鋭いカチカチ音です。
オイルが届かない理由はそう多くありません。通路の汚れ、アジャスター 自体の摩耗、オイル量の不足、硬すぎるオイル、寿命を過ぎたオイル。 ここでは機械的な破損はむしろ例外で、多くの場合、問題は潤滑から 始まっています。
音の性格と見分け方
| 音 | 発生源 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 上部からの速いカチカチ | ラッシュアジャスター | 回転数とともに速くなる。負荷には反応しない |
| エンジン前面からのシャラシャラ | チェーンとテンショナー | 始動時に聞こえる。タイミング系から |
| 下からの鈍い打音 | コンロッドメタル | 負荷で大きくなる。音程が低い |
| インジェクターのカチカチ | 燃料系 | 一定で、暖機しても変わらない |
| ヒューという音、うなり | 補機類 | ベルトを外すと消える |
いちばんの手がかりは頻度です。アジャスターのカチカチ音は回転数が 上がると速くなります。カム山が当たる回数が増えるからです。対して メタルの打音は負荷に反応します。この音のグループ全体の切り分けは 症状ページ エンジンの打音 に、アジャスター自体の点検方法は ラッシュアジャスターを点検する にまとめてあります。
診断で何を見るか
順番は定番で、安いところから始まります。オイルの量と状態、いつ何を 入れて交換したか。故障コードの読み取り。そして冷間時と暖機後の 両方で聴診器を当てる。これで音が消えるのか残るのかがわかります。 オイルの状態から整備の放置がうかがえる場合、まず定期を待たずに 適正粘度のオイルに交換して一週間聞いてみる、という手を取ることが よくあります。それだけでカチカチ音が消えることは珍しくありません。
オイル交換後も音が残るなら、ヘッドカバーを外して機構を評価します。 そのときタイミング系も同時に点検するのが普通です。同じ場所を 二度ばらしたい人はいないからです。
この「まずオイル、金属はそのあと」という考え方は他のエンジンでも 通用します。わかりやすい例が プジョー・シトロエンEP6のバランスシャフトの打音 です。
修理をどう決めるか
ここでの費用の半分は、部品代ではなく部品にたどり着くための作業です。 だから整備士は、上部の作業を一度にまとめることを勧めることが多い。 アジャスター、時期が来ていればタイミング系、そしてどのみち外す ヘッドカバーのガスケット。
聞いておくとよい質問が二つ。オイル通路とオイルストレーナーを 評価したかどうか。詰まった通路を通してオイルを供給される新品の アジャスターは、数か月でまた鳴ります。そして放置した場合のリスクは 何か。音の出るアジャスターのまま走ることについては 音の出るラッシュアジャスターのまま走るとどうなるか に別途まとめてあります。
もうひとつ。車から出る新しい音がすべてエンジン由来とは限りません。 動弁系の奥へ踏み込む前に、ブレーキの音ではないことを確かめて ください。ブレーキの「言葉」は 音でブレーキパッドの摩耗を見分ける で扱っています。
明日にでも入庫すべきかどうか知りたいなら、Stukアプリで二回録音して ください。冷間始動直後に一回、暖まったエンジンのアイドリングで一回。 アプリは録音とあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因を確率つきで 示します。二つの録音の差そのものが、整備士にとって多くを語ります。