打音のする車のボンネットを開けたとき、いちばん大事なところで間違えやすいことが あります。エンジンルームにあるのはエンジンだけではなく、ファンベルトにぶら下がった 十いくつのユニットもある、という点です。オルタネーター、ウォーターポンプ、エアコン コンプレッサー、アイドラープーリーやテンショナー。どれもブロックの奥からの打音と 耳ではほとんど区別できない音を出します。しかも両者の修理費はまったく違うので、 分解の話が出る前に切り分けておく価値があります。

補機がここまで見事にエンジンを真似る理由

どの補機もエンジンブロックそのものにボルトで留まっています。金属は振動をよく伝える ので、オルタネーターの中で鳴っているベアリングは、ブラケットを通してそのままブロックへ 音を送り込みます。そこから出てくるときには「エンジンの打音」になっているわけです。 第二の要素は回転です。補機はクランクシャフトと同期して回るため、音の周波数はエンジン 内部の機構とまったく同じように回転数とともに上がります。

だから結論はこうなります。耳と周波数だけでは出どころは切り分けられません。切り分ける のは負荷への反応です。補機は選んで負荷をかけられますが、エンジン内部の機構にはそれが できないからです。

難易度順の4つの点検

  1. 電気負荷。 暖機後のアイドリングで、ハイビーム、リアの熱線、ブロワーを最大に します。オルタネーターは電流を多く発電し、そのベアリングにはより強い荷重がかかり ます。音が大きくなるなら、探す場所はそこです。 オルタネーターの鳴き:ベアリングかベルトか も参考になります。
  2. エアコン。 コンプレッサーを何度か入切します。クラッチがつながるのに合わせて 出る打音なら、それはコンプレッサーかそのクラッチであってエンジンではありません。 エアコンコンプレッサーのクラッチが壊れるときの音 を参照してください。
  3. ステアリング全切り。 油圧パワステの車なら、ハンドルを切りきった状態で2秒ほど 保持します。ポンプに負荷がかかり、その音が前面に出てきます。
  4. ベルトの取り外し。 工場で行う最後の確認です。ベルトを外し、冷えたエンジンを 10〜15秒だけかけて音を聞きます。静かになれば補機。打音が残れば、出どころはエンジンの 中です。

オルタネーターとウォーターポンプまで絞れたら、次は ボンネットの下のうなり:オルタネーターかウォーターポンプか へ。プーリー側については オルタネーターのデカップラープーリーが壊れるサイン にまとめてあります。エンジンルームの音の全体カタログは症状ページ エンジンの打音 にあります。

それぞれの仮説が意味すること

出どころ音の質修理の規模
アイドラー、テンショナー均一なうなり、または規則的な打音安い部品ひとつ
オルタネーターのベアリング電気負荷とともに大きくなるうなりオルタネーターのオーバーホール
ウォーターポンプ金属質を帯びたうなり、しばしば水漏れを伴う中規模、ベルト駆動の奥なら大掛かり
タイミングチェーン前方からのガラガラ、シャラシャラ。冷間時に大きいキット代+相応の工賃
ラッシュアジャスター上からの速いカチカチ。暖まると消えるのがふつうヘッドを開ける工賃
クランクシャフトの軸受負荷時、回転に同期した低く鈍い打音エンジンオーバーホール

ラッシュアジャスターについては ラッシュアジャスターの異音を抱えたまま走る、 チェーンについては 耳で確かめるタイミングチェーンの張り伸びたタイミングチェーンのまま走れるか をどうぞ。

落ち着いていられる境界線はどこか

現実的な原則はこうです。音源が高い位置にあり、外部負荷で変化しやすいほど、状況は 穏やかです。補機はほとんどの場合、時間の余裕をくれます。寿命の近いアイドラーや オルタネーターのベアリングは、まず何週間もうなり続けます。チェーンの伸びも段階的に 進みます。

警戒すべき領域は、負荷とともに大きくなり、ここまでのどの点検にも反応しない、低く 鈍い打音です。とくに油圧の低下を伴う場合。そこでは走り続けることが修理をオーバー ホールに変えてしまうので、「月曜まで」と粘らずに止めるのが正解です。判断の目安は エンジンの打音を抱えたまま走れるか にあります。

工場に行く前に音を残しておきたいなら、Stukアプリで二つの状態を録音してください。 無負荷のアイドリングと、エアコンとライトを入れた直後です。探しているのは、まさに その二つの録音の差です。アプリは録音とあなたの回答を突き合わせ、考えられる原因を 確率つきで示します。