アイドリング時のカチカチ音は、ミシンのような、あるいは爪でブリキを叩くような、 高くて速い音です。ほとんどの場合はバルブが働くエンジンの上のほうで生まれ、そして たいていは大事にはなりません。ただしカチカチ音にも心配なシナリオはあるので、自分の 音がどのグループに属するのかを見極めることが大切です。もともとの作動音なのか、 1か月以内に整備を入れるべき合図なのか、それとも今週中に診断へ行くべき理由なのか。

カチカチ音の出どころ:主な4つ

アイドリング時のカチカチ音は、実質的に次の4つの部品から出ています。

  • バルブクリアランス。 カムの山とバルブのあいだには、熱を見込んだすき間が設計上 設けられています。これが規定を超えて広がると、カムがバルブを叩いてカチカチ音を 出します。手動調整式のエンジンに典型的です。
  • ラッシュアジャスター。 そのすき間を油圧で自動的に詰める小さなプランジャーです。 摩耗したり空気を噛んだりすると、すき間を保てなくなってカチカチ鳴ります。
  • インジェクター。 直噴エンジンではインジェクターがはっきりしたクリック音を 立てながら開きます。これは正常です。
  • タイミングチェーン。 伸びたチェーンや弱ったテンショナーは、金属質を帯びた シャラシャラしたカチカチ音を出します。空ぶかしのときに目立つことが多い音です。

5番目の、あまり意識されない候補が補機類です。ファンベルトのアイドラーベアリングや オルタネーターのデカップラープーリーは、アイドリングでバルブのカチカチ音とそっくりな 音を立てます。見分けるのは簡単で、工場でファンベルトを外して数秒だけエンジンをかけ ます。音が消えたなら、見るべきはエンジンの中ではなくアイドラーとオルタネーターです。

条件から出どころを切り分ける

サイン考えられる出どころ意味
均一なカチカチ、買ったときからあるインジェクター正常、対応不要
駐車後3〜10秒鳴り、その後静かラッシュアジャスターオイルに注意
常時カチカチ、回転とともに増えるクリアランスまたはラッシュアジャスター1か月以内に診断
シャラシャラを伴い、空ぶかしで一気に出るタイミングチェーン今週中に診断
カチカチ+失火、エンジンが揺れる動弁系だけの話ではないすぐに診断

周波数も手がかりになります。カムシャフトはクランクシャフトの半分の速さで回るので、 バルブのカチカチ音は回転数の「半分」で鳴ります。回転数と同じ周波数の音は、ピストン 周りか補機類と結びついていることが多くなります。

もうひとつの手法が位置の特定です。整備用の聴診器、あるいは硬めの紙を筒状に丸めた ものをヘッドカバーに当て、次にチェーンのある前面カバー、そしてオルタネーター本体へ と移します。筒越しにカチカチ音がいちばん大きく聞こえる場所が出どころです。粗い方法 ですが有効で、 自作の整備用聴診器 にやり方をまとめてあります。

心配のいらないケース

修理のいらないシナリオが二つあります。ひとつめは直噴のインジェクターの音です。 何年も同じで、オイルにも暖機にも左右されず、車外ではよく聞こえるのに室内ではほとんど 聞こえません。ふたつめは、長く置いたあとにラッシュアジャスターが短くカチカチ鳴る 場合です。オイルが抜けてオイルパンに落ちているため、最初の数秒は油なしで動きます。 5〜10秒で消えるなら許容範囲ですが、オイルとフィルターを新しくしてもいいころだ、という ほのめかしではあります。 ラッシュアジャスターの異音を抱えたまま走る も参考にどうぞ。

別枠なのが、可変バルブタイミングを持つ最近のエンジンがアイドリングで出す ディーゼルのようなゴロゴロ音です。メーカー自身が作動上の特性と明記していることも あります。同じ車種の健全な車と聞き比べるのが有効です。隣に停まった同型車が同じ音を 出しているなら、心配はいりません。

3つめのシナリオはエンジンとは無関係です。リレーのカチカチ、パージバルブのブーンという 音、後席の下から聞こえる燃料ポンプのうなりが、エンジンの音と勘違いされることが あります。違いは、そのリズムがエンジン回転数とまったく連動しないことです。

カチカチ音が警告になるとき

このグループでは、ほぼどのケースにもオイルが関わっています。ラッシュアジャスターは オイルレベルの低下、フィルターの詰まり、粘度を失った潤滑油にまっさきに反応します。 油圧警告灯が点くより先に、カチカチ音で油の不足を知らせてくれるのです。ですから 急にカチカチ鳴りはじめたエンジンは、その日のうちにレベルゲージを見る理由になります。

最近になって出はじめ、しかも進行しているカチカチ音には注意してください。ずれた バルブクリアランスは、やがてバルブの焼けにつながります。シリンダーヘッドの高額修理 です。汚れたオイルで鳴るラッシュアジャスターは油の不足をほのめかしており、それは 次に軸受とカムシャフトを襲います。伸びたチェーンは最悪の場合に歯飛びを起こし、 そうなるとバルブとピストンが出会います。

カチカチ音に失火が加わった場合は、別に注意が必要です。エンジンが揺れ、アイドリングが 乱れます。この組み合わせは動弁系だけの話ではなく、圧縮に関わる故障が音と気筒の 両方を壊している可能性があります。また、暖まったエンジンで加速時にカチカチ音が澄んだ金属音に 変わるなら、それは別のメカニズムで、リスクも別物です。症状ページ 加速時のキンキン音 を参照してください。自分の音は エンジンのカチカチ音アイドリング時の振動 の典型例と聞き比べられます。

修理はどう決まるか

順番は安いほうから高いほうへ進みます。まずオイルの量と状態です。交換から時間が 経っているなら、新しいオイルと新品フィルターでラッシュアジャスターのカチカチ音が まるごと消えることがよくあります。しかもリストのなかでいちばん安い一手です。次に クリアランス。調整式のエンジンなら定期整備と合わせて行います。ラッシュアジャスター そのものの交換はもっと大きな作業で、エンジンによってはカムシャフトを外すことに なります。いちばん高いシナリオは、テンショナーとガイドを含むタイミングチェーン キットです。

整備士が必ずしも言わないことが二つあります。ラッシュアジャスターとバルブクリアランスの 工賃は、エンジンの設計によって天と地ほど違います。2時間で終わるものもあれば、カム シャフトを降ろして半日というものもあります。見積もりを比べる前に、自分の車はどちら なのか聞いてください。そして何を交換したにせよ、摩耗を招いたオイルの管理も変える 必要があります。同じ扱いのままなら、新品でも1年でまた鳴りはじめます。予算の話は 工場での不要な追加作業を避ける も参考になります。

予約を入れる前にどちらを向けばいいか知りたいなら、カチカチ音をStukアプリで録音して ください。状況についてのいくつかの質問への回答と音を突き合わせ、考えられる原因を 確率つきで示します。そのリストがあれば、工場を選ぶのも、提示された金額が妥当か 判断するのも楽になります。