空港の駐車場に一週間、あるいは屋外に一か月。久しぶりに乗り込んでエンジンを かけると、それまでなかった打音が返ってくる。数秒すると音は消え、何事もなか ったようにアイドリングが安定する。よくある場面で、理由もほぼ決まっています。 停めているあいだにオイルがエンジン上部から落ちてしまい、始動直後の何回転か は潤滑なしで回っているのです。問題は、あなたのケースが正常の範囲かどうか。 それを見分ける目印ははっきりしています。

停めているあいだに何が起きているか

エンジンが回っているあいだ、オイルポンプはオイルラインを通して摺動部すべて にオイルを送り続けます。エンジンを止めればポンプも止まり、オイルは重力で ゆっくりとオイルパンへ落ちていきます。ラッシュアジャスターから、チェーン テンショナーから、カムシャフトポジションアクチュエーターから、カムシャフト の上から。一晩ではさほど落ちませんが、一〜二週間でほとんど落ちきります。

放置後の最初の始動は、数回転を無潤滑で回すことを意味します。ポンプがライン を満たし、油圧を立て直すまでの時間が必要だからです。打音はここで生まれます。 放置期間が長いほど、外気温が低いほど、オイルとフィルターの状態が悪いほど、 静かになるまでの間が長くなります。

始動直後に鳴るのは誰か

発生源継続時間評価
ラッシュアジャスター上部からのカチカチ音2〜10秒放置後なら正常
チェーンテンショナーとチェーン金属的なシャラシャラ、ガラガラ1〜3秒要経過観察
カムシャフトポジションアクチュエーター乾いたガラガラ音1〜2秒要経過観察
クランクシャフトメタル下からの重く鈍い打音消えず、しだいに大きくなる危険
スターターとその駆動部始動前のガリガリ音、キュルキュル音エンジンがかかるまで別系統の問題

オイルの来ていないラッシュアジャスターはカチカチ鳴ります。もっとも多く、 もっとも無害な参加者です。詳しくは 冷間時のラッシュアジャスターのカチカチ音 をご覧ください。油圧のかかっていないチェーンテンショナーはチェーンを張れず、 チェーンがガイドを叩きます。カムシャフトポジションアクチュエーターはオイル で満たされるまでガラガラ鳴ります。こちらは 冷間時のカムシャフトポジションアクチュエーターのガラガラ音 で扱っています。この三つはいずれも、油圧が立ち上がった瞬間に黙ります。

一方、ブロック下部から響く重く鈍い打音が数秒経っても消えないなら、これは まったく別の話です。クランクシャフトメタルの打音がそれで、無潤滑始動こそ メタルにとってもっとも破壊的な行為です。

正常か故障か:三つの問い

一つめはどれだけ停めていたか。二週間の放置のあとの打音は説明がつきます が、毎朝同じ音が出るなら説明がつきません。オイル、フィルター、ラッシュ アジャスターを点検する理由になります。

二つめはどれだけ続くか。2〜3秒なら許容範囲。10秒以上、あるいは暖機 しないと消えない音なら、さらに先を調べる必要があります。

三つめは音の性質。上から聞こえるカチカチ音やシャラシャラ音は無潤滑始動 の定番の顔ぶれですが、下から響く鈍いドスドスは違います。用語だけではぴんと こないときは、症状ページの録音とご自身の音を聞き比べてください。 冷間時のエンジン打音始動時のキュルキュル音。放置後の笛のような 音はたいていファンベルトとアイドラー由来で、これはまた別の話になります。

無潤滑始動を減らす

対策は単純で、費用もかかりません。まず品質のよいオイルフィルター。ドレン バックバルブが、駐車中もオイルラインにオイルを保ってくれます。安価な フィルターではこの弁が数か月で硬化し、毎朝エンジンが乾いた状態で回り始め ます。よいフィルターでオイル交換をしただけで、朝のカチカチ音が完全に消える ことも珍しくありません。逆に整備の直後から打音が出始めた場合は、 オイル交換後のエンジン打音 のほうが該当します。

二つめは季節に合った粘度。冬に硬すぎるオイルは、エンジン上部に届くまでに とんでもなく時間がかかります。三つめは、長期放置後の最初の始動で、点火 させずにスターターで数秒クランキングしてやること。燃焼が始まる前にポンプが 油圧を立て始めます。

これらをすべてやっても始動時の打音が残るなら、次はラッシュアジャスターか タイミングチェーン一式の交換です。どちらも耳ではなく実測で判断すべき作業 なので、承諾する前に「何をどう測ったのか」を必ず聞いてください。

自分のケースが無害かどうかをいちばん早く知る方法は、最初の始動をStukアプリ で録音することです。音と、どれだけ停めていたかという回答を突き合わせ、考え られる原因を確率と緊急度つきで示します。