オルタネーターは補機駆動のなかでいちばん速く回るユニットです。プーリー 径はクランクプーリーの2〜3分の1しかないので、ローターは毎分数万回転 まで回ります。支えているのは2個の転がりベアリングで、ここが摩耗すると ボンネット内の異音の主役になります。よい知らせもあります。この音には はっきりした特徴があり、部品を降ろさなくても当たりを付けられます。
なぜベアリングが摩耗するのか
摩耗を早める原因はいくつもあり、そのほとんどが外側の事情です。ベルトの 張力はローターシャフトを横から常に押し続けます。張りすぎればフロント側 ベアリングへの荷重は何倍にもなります。下からは路面の水と泥を浴びます。 深い水たまりや高圧洗浄はグリスを洗い流します。上からはエキゾースト マニホールドの熱が伝わり、グリスは早く軟化して劣化します。
さらにクランクの回転ムラが生むベルトの脈動があります。本来はデカプラー プーリーが吸収する役目ですが、摩耗したデカプラーは逆に衝撃をそのまま シャフトへ伝えます。つまりデカプラーの状態とベアリングの寿命は直結して います。
摩耗はどんな音になるか
音は段階を追って育ちます。どの段階でも気づくことができます。
- 冷間時の細い笛のような音。 始動直後の数分だけ出て、暖まると消え ます。グリスが硬くて軌道面に回りきっていない状態です。ベルトの滑りも 似た音になります。違いは症状ページ ベルト鳴きにまとめています。
- 回転数とともに上がる唸り。 いちばん分かりやすい段階です。空ぶかし で音程が上がり、ヘッドライトやリヤデフォッガーを入れると明らかに大き くなります。電気負荷がローターを強く引くからです。
- どの回転数でも出るうなりとゴロゴロ音。 軌道面が荒れています。 アイドリングでも走行中でも出て、車速には連動しません。
- ゴリゴリという金属質の擦れ音。 保持器が崩れかけています。焼き付き まで数回の走行という段階です。
どの段階にも共通する決め手は、音が車速ではなくエンジン回転数に付いて くること、そしてハブベアリングと違ってカーブで変化しないことです。 車種別の実例は シボレー・クルーズ:オルタネーターベアリングの唸り にあります。
脱着せずに確かめる方法
自宅のガレージでできる4つの方法です。
- 負荷テスト。 アイドリングでハイビーム、リヤデフォッガー、ブロワーを 入れます。唸りが大きくなればオルタネーターの疑いが濃厚です。
- 聴診器。 エンジンをかけたままオルタネーターのケースに先端を当てれば、 傷んだベアリングはすぐ分かります。長いドライバーの柄を耳に当てても 代用できます。回転部には絶対に近づけないでください。自作の方法は 自作できる整備用聴診器 で説明しています。
- ベルトを外して始動。 補機ベルトを外して短時間だけかけます。音が 消えれば補機のどれかが原因、残ればエンジン内部を疑います。
- ガタの確認。 エンジンを止めた状態でオルタネータープーリーを軸と 直角方向に手で揺すります。コツンとした当たりやガタがあればベアリングは 終わっています。
紛らわしい相手
| 症状 | オルタネーターベアリング | デカプラープーリー | アイドラープーリー | ウォーターポンプ |
|---|---|---|---|---|
| 灯火・熱線への反応 | 大きくなる | なし | なし | なし |
| 始動時・停止時の鳴き | まれ | 特徴的 | あり得る | あり得る |
| 停止後のカラカラ音 | なし | 特徴的 | なし | なし |
| クーラント滲み | なし | なし | なし | 特徴的 |
クーラントの跡を伴ううなりならウォーターポンプを疑う番です。2つの ユニットのどちらかを見分ける全体の道筋は ボンネット内の唸り:オルタネーターかウォーターポンプか にまとめています。アイドラープーリーが出す一定の唸りとの違いも 押さえておくと迷いません。
修理の決め方
オルタネーターのベアリングは消耗品で、ユニットごと替えるよりベアリング 交換のほうが割に合います。新品のオルタネーターはオーバーホールの何倍も するので、リビルドが一般的な選択です。
作業を頼む前に確認したいのはこの3点です。オルタネーターを降ろすついでに 何を一緒に交換できるか(ブラシ、レギュレーター、デカプラー)。工賃を 払うのは一度きりにしたいからです。ベルト張力を点検したか。張りすぎこそ が前のベアリングを壊した犯人で、新品も同じ運命をたどります。そして オルタネーター自身の冷却経路が詰まっていないか。泥で塞がったユニットは 熱を持ち、グリスを焼きます。
先延ばしを勧められない理由がひとつあります。ベアリングが焼き付くと ベルト駆動全体が止まります。充電はその場で失われ、多くのエンジンでは ウォーターポンプもパワーステアリングも止まります。予約して直せたはずの 修理が、レッカー案件になります。
ボンネットの奥から唸りやうなりが出てきて、工場に行く前に発生源を 絞りたいときは、Stukアプリで音を録音してください。録音を典型的な故障音 と照合し、考えられる原因を緊急度付きで示します。