エンジン上部から出るカチカチ音は、走行距離の伸びた車のオーナーなら ほとんどが聞いたことのある音です。周期はクランク回転のちょうど半分、 音色は乾いていてミシンのよう、出どころはほぼ決まってヘッドカバーの 下の動弁系です。そこから先が分かれます。カムの山とバルブの すき間を、シムやネジで手作業で調整するエンジンもあれば、 ラッシュアジャスター — 油圧ですき間を自動で詰める小さな部品 — が 面倒を見るエンジンもあります。この二つは似た音がしますが、 直し方はまったく違います。

それぞれ何が叩いているのか

機械式のクリアランスは、カムの山、ロッカー、接触面が摩耗すると 広がります。カムの山が滑らかに乗り上がらず、叩くようになる。 だから一定で単調なカチカチになり、冷間でも暖機後でも同じです。

ラッシュアジャスターが鳴る理由は別です。オイルで満たされないから です。犯人は、油路の汚れとプランジャーの固着か、油圧の低下か、 硬すぎるオイル・粘度の落ちたオイルのどれかです。この打音は たいてい冷間で大きく、暖まるにつれて変化します。

耳での見分け方

特徴機械式クリアランスラッシュアジャスター
暖機後変わらないか少し大きくなる小さくなるか完全に消えることが多い
規則性一定、メトロノームのようばらつく。一部だけリズムから外れる
オイル交換への反応なし効く場合がある
音源の数たいてい1〜2気筒気筒間を移動することがある
エンジンの型式調整式の動弁系ラッシュアジャスター付き

最初にやることは、自分のエンジンがどちらの機構かを調べることです。 そもそもラッシュアジャスターが無いなら話は終わりで、 クリアランス調整の案件になります。詳しくは バルブの打音のサインに。 次に、暖機して音の変化を聞きます。診断に使えるのは変化のほうです。 温度によらず同じ打音ならクリアランス説、消えるならアジャスター説を 支持します — ラッシュアジャスターの点検方法冷間時のラッシュアジャスターのカチカチ音。 隣の分岐、つまり冷間時のチェーンやカムシャフトポジション アクチュエーターの打音は 冷間時のカムアクチュエーターのガラガラ音に あります。この系統の音の全体像は症状ページの エンジンのカチカチ音です。

どこから確かめるか

お金を無駄にしない順番はこうです。

  1. オイルとフィルター。 量、経過、粘度を確認します。硬すぎる オイルや寿命を過ぎたオイルは、アジャスター音のいちばん多く、 いちばん安い原因です。
  2. 油圧。 警告灯がちらついたりアイドリングが乱れたりするなら、 問題はアジャスターではなくオイルポンプやストレーナーかもしれません。
  3. 音源の特定。 ステソスコープかドライバーでヘッドカバーの上を たどります。クリアランスの打音は、たいていどれか1気筒の上に はっきりした最大点があります。
  4. クリアランスの測定。 調整式なら冷間でシックネスゲージを使い、 はっきりした答えが出ます。

音の「変化のしかた」を整備士に説明できると、診断は大幅に早くなります。 同じ原則は他でも効きます。たとえば ブレーキの鳴きはパッドかローターかでも同じです。

修理をどう決めるか

費用の幅は設計から来ます。動弁系まで1時間で届くエンジンもあれば、 補機と駆動系を降ろす必要のあるエンジンもあります。ですから工場には 総額だけでなく、その中身も聞いてください。ヘッドカバーのガスケット、 調整シム、新しいオイルは別計上されることが多く、二つの見積もりの 差は、利益率よりもこうした項目で説明がつきます。

さらに二つ質問を。部品を注文する前にクリアランスを測るのかどうか。 調整式のエンジンでは、その測定こそが診断であり、シムはそこから 選びます。そしてラッシュアジャスター式なら、油路の状態を見たのか。 詰まったギャラリーで給油される新品のアジャスターは、 数か月でまた鳴り始めます。

カチカチが聞こえるけれどどちらの話か分からないときは、 Stukアプリで2回録音してください。冷間始動の直後と、10分走ったあと。 この二つの差が答えの鍵で、アプリがどちらの説を支持するかを示します。